ミーシャの冒険 4
突然
周囲の景色がぐるぐると回った。
いや、回っているのはミーシャの方かも知れない。
そして
闇に包まれた。
明るい場所からいきなり暗い場所に移動したのだと理解するのに時間はかからなかった。
しかし、暗さに目が慣れるまでには時間が掛かりそうだ。
ぽたっ
ぽたっ
水音がする
水のにおいも感じる
ポウッと
目の前に灯りがともる
灯りはまるで生き物のように
1つが2つに
2つが4つに
分裂しながら増え続け、周囲の岩壁に貼り付いた。
なるほど、ここは洞窟のようだ。
「こちらへおいで」
上の方から優しい声がした。
「そこにいたら濡れてしまうよ」
なるほど、足もとの岩は濡れており、周囲にはポタポタと水滴が落ちている。
とりあえず、そこに居続ける理由はないので、足場を探りながら、ゆっくりと岩で出来た階段を登った。
「フローラか?」
にしては声が透き通っていたが・・・
「はい?」
またしてもすぐ後ろで声がした。
聞き覚えのある涼やかな声だ。
振り向くと、半分透明のフローラが目の高さで宙に浮いている。
「何をしている?」
驚いたと言うより、呆れたような気分になった。
「ここは本当なら私が存在できない場所。だけど案内を頼まれたからついてきた。実体じゃないから浮いてるだけ」
わかったような、わからないような説明を聞き、混乱するのも馬鹿らしいので、ミーシャは優しい声の主の所とへ急いだ。
洞窟は上に広くなっていた。
声の主はテーブルのように平たくなった白い岩の上にいた。
鮮やかな赤いドレスと漆黒の髪が周囲の白い岩から鮮やかに浮き出ている。
象牙色のなめらかな肌は、動かなければまるで人形のよう。
穏やかな笑顔を浮かべてミーシャをじっと見ている。
「あ、えーと」
これだけの美女に見つめられてドギマギしない筈がない。
「・・・はじめまして」
我ながら間が抜けた状態だ、と自覚しながらも、ミーシャは言葉よりも先に全ての感覚が、この女性に集中してしまうのを感じた。
「ようこそ、私の森へ」
桜色の艶やかな唇を動かして言葉が紡がれた。
「私は闇姫、この森を統べる者」