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春本 美穂
春本 美穂
novelistID. 49342
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ミーシャの冒険 3

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ミーシャの冒険 3

空が段々低く・・・と思いながら歩いているうにに、ミーシャは今登っていた小さな山の尾根へ出た。
少し広がった幹と幹の隙間から周囲を見回してみたが、人の存在するような、煙のようなものは見当たらない。
ただ、この先に幾重にも続く山塊がミーシャをウンザリさせなかったと言うと嘘になる。
「あーもぅ、いい加減出て来てくれないかなぁ、魔族」
「はい?」
突然降って湧いたような涼やかな声に、ぎょっとして振り向くと、すぐ後ろ、手を伸ばせば届く程の距離に少女が立っていた。
「い、いつの間に」
ミーシャが思わず後ずさると、少女は覗き込むかのように上半身を傾け、金色の長い髪を頬に垂らした。
若草色の貫頭衣を着た少女は上目遣いで
「ずっといたけど、気が付かなかった?」
といたずらっぽく笑った。
「いるんなら、教えてくれればいいのに」
「あら、だって、あなたが何を探しているかなんて、あなた以外の誰が知っているというの?」
「少なくとも、お話してくれるつもりはありそうだね」
ミーシャがその場に腰を下ろすと、少女はぴったりと寄り添うようにペタリと隣に座った。
「私の名前はミーシャ、麓の村の農民」
「私はフローラ」
「フローラ、って,お花?」
「うん」
ミーシャはフローラと名乗った少女をじっと見た。
ずっと森に住んでいるはずなのに肌や髪に汚れはなく、粗末な貫頭衣も破れや解れがない。そもそもずっとミーシャについていたというのなら、手足は草や茨などで傷だらけになっているはずである。
「フローラ、君くらいの女の子がいなくなって探しているんだけど、最近森の中で見なかったかな?」
「知らない」
フローラは考えるそぶりも見せずに即答した。
「そっか、君は見ていないか」
「君は、じゃなくて君たちは、だよ」
「君たち?」
「フローラはね、この森の中にいっぱいいるの。フローラがいるところならミーシャはどこにだっていつでもすぐに行くことが出来るの」
言っている意味がよくわからないが、少なくとも人間の常識を超えることだけは理解できた。
「フローラ、君は人間ではないんだね」
フローラは頷き
「触ってみて」
その透き通るような白い指をミーシャの目の前に差し出した。
ミーシャは触れてみようと手を伸ばしたが、見えている場所には何の感触もなく、慌ててフローラの身体のある場所を探ってみたが、手は空をつかむのみであった。
「理解出来た?」
「精霊?」
「まぁ、そう考えても間違いとは言えないけど。正確に言うと、ここにいるのは私の本体ではないので、触る事は出来ないの。
あ、でもどれも私であることに間違いないので、どこで話しても話は通じているの」
また、不可解な言葉をフローラは紡いだが、ミーシャは現実は現実として何か利用出来ることはないだろうかと考えた。
「ねぇ、フローラ」
「はい」
「君の仲間で、この森で起きたことを全て知っている人はいないだろうか?」
「人はいない。でも、人でないならいる」
「それでいい、案内してもらえないか?」
「わかった」
フローラは立ち上がると、いたずらっぽい笑みを浮かべてミーシャを見た。
作品名:ミーシャの冒険 3 作家名:春本 美穂