覇王伝__蒼剣の舞い1
第4話:四獣聖候補現る!?
1
カン___!
蒼天に、この日も金属音が軽快に響く。
「やるじゃん。あの候補生」
林檎を囓りながら、朱雀の焔が軽く口笛を吹いた。その隣で、どうしたものかと肩を落とす拓海は、この日何度目かのため息をついた。
___四獣聖候補。
そう云って突然蒼国王城にやってきたのは、拓海と年も変わらぬ少年だった。
名を、リョウ・オン。
カン!
宙で銀色に光る剣が、クルッと回って石畳に突き刺さる。
王城でも腕に自信ありと云われた衛士が、この少年の前に負けて何人目だろう。実戦用の剣ではないゆえ殺傷能力はないが、いくら何でも情けなさ過ぎる。
「笑い事じゃないと思います、焔さま」
「あん?」
そう、笑い事ではない。
いざ、戦となったら蒼国は危ない。事実、先般の戦いでもまともに敵と戦えたのは白虎の星宿と玄武の狼靖、朱雀の焔、そして___。
「どうです?僕、四獣聖になれますか?」
リョウ・オンは目を輝かせて星宿の前にやってきた。
「腕は、いいようだ」
「ありがとうございます。嬉しいです。四獣聖・白虎さまに直に見て頂けるなんて」
「構わないよ。戦力補強は必要だからね。唯、四獣聖になれるかどうかは別だが」
「僕、頑張りますっ!」
「あ、そう…」
さすがの星宿も、困ったなと云う顔になった。
音便にやんわりと諦めさせる作戦は、ここに玉砕する。
褒めたのが、かえって彼を煽ってしまった。
この場合、即効力のある男は気にいらげに木に凭れている。
第一、四獣聖は四人。候補を募集している事はないのだが。
玄武は狼靖が復帰しているし、他三人はバリバリの現役。いったい、リョウ・オンは何を勘違いしたのか。
『ハッキリ云ってやりゃぁいいんだよ。用はねぇ、って』
清雅がそういうのを、星宿たちがそれでは可哀想だとやんわり作戦に出てこの結果だ。
清雅だったら、本気でリョウ・オンに掛かっていく。リアル過ぎる想像に、背筋がゾッとなるのは拓海だけだろうか。
「あの…」
「何だ?」
「あちらの方も、候補の方ですか?」
リョウ・オンが指さす先に、四獣聖と拓海の視線が運ばれる。
「げっ…」
煩そうに長い髪を掻き上げる男が一人。
「ああ、彼は___」
「よぉ、小龍。腕慣らししようぜ」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍