覇王伝__蒼剣の舞い1
蹄の音が、遠ざかっていく。
その様子を、彼は見つめている。
顔半分を金髪に隠し、見つめる瞳も同じ色に染まっている。
「ふふ、さすが蒼王。紅王さまを見方にしてしまわれたか」
ぎゅっとカーテンを握り締め、男は唇をかみ締める。
「だが__、貴方の弱点をもう掴んだ。その時貴方はどうするか、蒼剣と引き替えに身を晒しますか?」
男は、窓から離れ室を出た。
カンカンと、剣のぶつかる音が中庭に響く。
この一月で、拓海の剣は上達していた。
レオ相手に、三戦し内二敗。
「蛙の子は蛙、ですね」
横に立った男に、清雅が視線を流す。
「随分あの半人前をかってるようだな、白虎」
「彼は、成長しますよ。玄武さまに並ぶ腕に」
「何がいいたい?」
「いえ」
「申し上げます。蒼(あお)の谷の者が陛下にお逢いしたいと来ております」
「蒼の谷?」
「この間、蒼国が紅華・白碧連合精鋭と戦った国境ですよ」
「そこの者が何しに」
「四獣聖になりたいそうです」
「はぁ?」
「おいおい、冗談じゃねぇぞ…」
髪をクシャクシャと掻きながら、清雅は嫌な顔をした。
また、面倒な事が起きる。
その勘は、見事この後的中する事になるのである。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍