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覇王伝__蒼剣の舞い1

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第1話:四獣聖見参


              1
 
 四国___嘗て一つの帝国だったかの地は四人の王と四つの国に分かれた。
 北に黒抄(こくしょう)、西に白碧(はくへき)、南に紅華(こうか)、東に蒼国、再び覇王の元に一つになるべく一本の剣が人々を吸い寄せる。
 その剣の名は“蒼剣”___その力は天を裂き、自ら使い手を選ぶという意志を持つ天下覇道の剣。
 行方が理解らなった蒼剣が見つかったと黒抄国主・黒王(こくおう)こと黒狼(こくろう)が知ったのは、前覇王死去七年後。だが、それは当時に彼の怒りと憎悪が一気に吹き上げた瞬間であった。
 「___蒼王の元にあるだとォ…、正統な覇家の吾ではなく…」
 「どうやら、玄武が渡したとの報せでございます」
 「玄武…?狼靖(ろうせい)か」
 「平民出身ながら覇王陛下と共に、四国の英雄となった男でございます。更に、蒼王の母方の叔父。しかし玄武一人で、蒼剣を覇王家から持ち出したとは思えません」
 「狼靖め…」
 「黒王陛下、蒼剣を奪いましょう。蒼国の蒼王さまは王不適格、蒼剣を持つに値しないかと」
 「当然だっ…!奪うだけでは腹の虫が収まらぬわ。闇己、理解っておろう?」
 「よろしいのでございますか?腹違いではございますが、末の弟君を」
 「吾に、そのような者はおらぬ。好きにせよ」
 「畏まりましてございます、我が覇王陛下」
 「覇王か…よい響きだな。ククク」
 残忍な笑みを零し、黒王は杯を一気に煽った。
 こうして、北と東の間に歪みが生じ、人々は益々蒼剣に吸い寄せられていく。主を失えば剣は再び彷徨う、次なる主を求めて。
 だが、蒼剣に吸い寄せられるのは黒王のような男だけとは限らない。
 覇王の為に剣を振るう“四獣聖”と呼ばれる親衛隊がそれである。
 ただ黒王たちと違うのは、四国の為に再び蒼剣の元に戦うためだ。嘗て覇王が、四獣聖を率い四国のために戦ったように。
 「___清雅(せいが)さま、お腹空きません?」
 「お前なぁ、よくこんな時にそんな呑気な事を云えるな。状況理解ってねぇな」
 「理解ってますよ。命狙われて追われるんですよね」
 「相手は、黒抄の黒狼だ。相変わらず自分の手は汚さずってか?腹黒男め」
 腰まで伸ばし放題の髪を乱暴に掻き上げ、清雅は気にいらげに舌打ちをした。