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漢字一文字の旅  第三巻

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十三の五  【成】



【成】、戈(ほこ)を作り終わり、飾りを付けて、祓い清める意味のことだとか。
そうか、【成】はあるプロセスを終えた時に使える字なのだ。
しかし、今時の「成人」なんて、まだまだ未完成……ですよね。

その【成】、「賛成」に「成功」、そして「成果」と前向きな熟語を作る。
そして、そんな【成】を三つ。そこまで欲張った名前が、石田三成。
この男、1560年に今の滋賀県長浜市の近くの石田村で生まれた。そして、羽柴秀吉が長浜城主となった時、小姓として仕えた。

1582年に織田信長が本能寺で横死。その後、秀吉が天下を取って行くが、石田三成も側近として力を付けて行く。

その秀吉が1598年に没し、その後徳川家康が天下人の座を狙う。

そして1600年7月、東軍西軍と分かれ、天下分け目の戦い・関が原の戦いが勃発。
しかし、松尾山に布陣していた小早川秀秋は迷っていた。これに業を煮やした徳川家康が威嚇射撃をした。これで意を決した小早川1万5千の兵は東軍に寝返った。
これにより勝敗は決まり、西軍は敗走する。

佐和山城は落城し、石田三成は伊吹山の裾野の小橋で捕縛される。
そして六条河原で斬首され、その首は三条河原に晒された。

辞世の句は…
筑摩江や 芦間に灯す かがり火と ともに消えゆく 我が身なりけり

41年と短いが、波瀾万丈な生涯だった。
そんな石田三成の旗印は「大」と「一」と「万」と「吉」を重ね合わせた漢字一文字――『大一大万大吉』。
(だいいちだいまんだいきち)と読む。
その意味は、大とは天下を意味し、
天下のもとで、一人が万民を、万民が一人のために、という世の中になれば、すべての人が吉となる……ということらしい。

しかし、これってちょっと似てませんか?
最近、ラグビーの合い言葉――「one for all, all for one」
一人はみんなのために,みんなは一人のために、とよく耳にしますよね。

『大一大万大吉』(だいいちだいまんだいきち)
石田三成は400年前に、漢字一文字で「one for all, all for one」と宣言していたのだ。
これって、メッチャえらいヤッチャ!

【成】は、祓い清める意味。
とにかく石田光成に充分心が清められました。