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漢字一文字の旅  第三巻

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十三の三  【冠】



【冠】、ワ冠の「冖」と「元」と「寸」の組み合わせ。だが本来は「冖」ではなくウ冠の「宀」だとか。
これで廟の中で行われた元服の儀礼の意味の字だそうな。
ここから「冠者」は元服した若者のこと。

今から約1,400年前、聖徳太子は十七条憲法と冠位十二階を定めた。
冠位十二階は血族による世襲制とは異なり、能力によって役人になれる制度だ。
そこには六徳目の「徳・仁・礼・信・義・智」の位があった。
そして、冠の色は――紫・青・赤・黄・白・黒――の六色。そして、それぞれに濃淡が付けられ、冠位十二階に分けらた。

例えば小野妹子の場合、【冠】は礼の位の赤だった。だが、その後遣唐使で貢献し、帰国後は大徳の最高位、濃い紫に昇進した。

しかし、ここで疑問が。
なぜ緑(みどり)がないのだろうか?
これを調べてみても、よくわからない。

それでも説がある。
当時の染色は単一の染料から染める。
例えば、紫は紫草の根、青は藍の生葉からだ。さらに赤は茜、黄はくちなし、黒は柏からの染料だったとか。
ならば緑は……キハダやウコンの黄染めに、藍の生葉の青を加え、混色させて色出ししたそうな。
そのためか、正直言って、邪魔臭かった、のではないかと意見がある。

確かに、1,400年前は公害がない。自然一杯で、そこらじゅう緑だらけだった。
そんなありきたりの緑色を作るために、混色の手間を掛けるなんて、という発想だったのかも知れないなあ、と現代風手間省きの解釈でここは収めるしかない。

されども【冠】、男子の元服の儀礼の意味ならば、若者用の「緑冠」があっても良さそうなものだが……。