漢字一文字の旅 第三巻
八の六 【吉】
【吉】、「士」と「口」の組み合わせ。
「士」は邪悪なものを追い払う鉞(まさかり)、また「口」は神への祈りの祝詞を入れる器の形だとか。
これにより神への祈りの効果を守ることを示し、これを【吉】というらしい。
そしてこの鉞により願いは実現し、人々は幸せとなる。まさに【吉】だ。
しかし、ここにやっかいなことが。
「士」と「口」が組み合わさった 「 士
口 」
これは「さむらいよし」と呼ばれてる。
だが戦前までは行書が多く、下が長い「土」(つち)と「口」が組み合わされて
「 土
口 」
これを「つちよし」と呼ぶ。
そう言えば、友達に吉田君がいた。
彼の「よし」は下が長い「つちよし」だった。
そして馴染み深い牛丼屋は下が長い―― 「 土
口 」 野屋 なのだ。
言い換えれば、「告」の左肩の「ノ」を取った漢字。
しかし、この 「 土
口 」、パソコンで簡単に変換できないのだ。
ならば、どうすればよいのだろうか?
「吉 下が長い」、これで検索すれば、その方法が山ほどヒットする。
だけど、読んでもわからない。
ということで、今使う【吉】という字は「土」(つち)ではなく、邪悪なものを追い払う鉞(まさかり)の「士」であるため、しっかり【吉】(ラッキー)を授かりましょう。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊