moonlight 改稿版(後編)
ネオの言葉に実緒は静かに頷き、苦しそうな表情でドアノブを握る。
「来てくれて、ありがとう……」
「うん……」
「ごめん、ね……」
実緒は暗い家の中へと戻っていった。ドアが、光と闇の境界線を引いているみたいだった。
「実緒、みお……」
……。
――結局、何もできなかった。
小学生の頃にあったことが再び、ドラマのハイライトみたいにパッ、パッ、とシーンが切り替わりながら、頭の中で再現され、。
あの頃と変わらない。友達の力にもなっていない。
その事実だけが、ネオの胸に刻まれる。無力な自分に、失望感でたまらなくなる。
脱力してしまい、両膝が自然と冷たいコンクリートの上につく。
扉の奥で、実緒は何を思っているのだろう。泣いているのだろうか。恐怖と絶望に、深い闇の中心で押しつぶされているに違いない。
この両手は、一体に何のためにあるのよ……。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ