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眼前の出来事

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 夫婦と息子と娘の4人家族が、テーブルについて食事をしていた。食事のメイン料理はビーフステーキで、付け合わせの温野菜といっしょの皿に乗っている。その横の温かいコーンスープからは、湯気がフワフワと出ている。主食の胚芽パンは、しっかりとした噛みごたえを感じさせてくれそうだ。
 その家族は食事を取りながら、楽しく雑談していた。高校生である息子は、学校でのクラブ活動での話を愉快に語っている。そして、小学生である娘は、クラスメートの女子の悪口を、女性特有の嫉妬心を活かして、熱く語っていた……。もちろん夫婦も、いろいろな意味で明るい話題を提供しており、その家族の雑談と食事は明るく続いていた。

 ……ところが、そんなときにだ。その家族がいるテーブルのすぐ近くで、複数の出来事が次々と繰り広げられたのであった……。



 トヨタのピックアップ車が、砂ボコリを立てながらやってくる。荷台には固定式重機関銃が備えつけられ、運転手と同乗者ともに武装していた……。
 その武装車両は少なくとも、プリウスと同じ生産ラインで製造されたようではないらしく、彼らが自分たちで魔改造を施した車のようだ。いわゆる『テクニカル』と呼ばれる車である。そのまま車検を通ることは無さそうだ。トヨタのエンブレムや名前が虚しく輝いている。
 そして、運転手と同乗者の武装についてだが、紛争地帯ではおなじみの自動小銃を得意気に持っていた。その自動小銃は『AK47』という名前なのだが、彼らが持っているのは、中国製のコピー製品であった。
 彼らは武装車両を止めると、自動小銃や重機関銃を前方に向けて発砲し始めた。やかましい銃声がし始めた途端、家族全員が銃声に驚いていた。
 しかし、その出来事が終わると、何事も無かったかのように、楽しい雑談と食事をすぐに再開した……。

 今度は大空に、1機の無人偵察機が現れた。その無人偵察機は『プレデター』という名前で、パイロットは遠く離れた安全な場所にいて、コカコーラでも飲みながら操縦していることだろう。
 次の瞬間、無人偵察機からミサイルが発射され、建物に見事命中した。爆発の黒い煙が盛大に上がり、運が悪い民間人の死傷者を乗せた救急車が道路を走り抜けていく。敵兵だけでなく、民間人も怒りの声をあげていたが、無人偵察機は悠々と飛んでいる。
 雑談中の家族は、怒ったり嘆いたりしている人々を、耳障りな様子で見ていた。ただ、その人々が消え失せると、ほっとした様子になり、雑談と食事を愉快に再開する……。

 その次に現れたのは、飲酒運転の車であった。泥酔している運転手は、両足の間に缶ビールを挟んで運転しており、絶えず蛇行を繰り返していた。他の車はその車に警笛を鳴らすが、泥酔運転手の耳には届いていないらしい。
 飲酒運転の車は、大きく蛇行した拍子に歩道を乗り上げ、たくさんの歩行者をボウリングのように衝突していった。ストライクだかスペアだかは知らないが、ボウリングのピンと化した憐れな歩行者たちが歩道にゴロゴロと転がっている。そして、飲酒運転の車はというと、そのまま街灯にぶつかり、シートベルトをつけていなかったらしい泥酔運転手は、運転席からフロントガラスをダイナミックに通り、アスファルトへと勢いよく飛んでいった。
 あの家族は、路上に転がっている死傷者や、アスファルトに着陸してから起き上がらない泥酔運転手を、憐れみと恐怖心とが混じった表情で眺めていたが、それらも同じように消え失せると、気を取り直し、雑談と食事を快適な感じで再開した……。

作品名:眼前の出来事 作家名:やまさん