エイユウの話~終章~
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「黄金の術師」という小説を彼に託したのは、それが、彼の祖先の話だと知ったからだ。第一次学園反乱の第一の被害者にして英雄。その人の名前は、「フィランス・ケルティア」といった。ケルティアと言う姓は珍しいものなので、彼に関係の人だと思って間違いは無いだろう。フィランスは金髪の女性であり、彼女もまた、迫害を受けていたという。イクサゼルはただ彼女を守りたかっただけだったのだと思うと、心苦しくも感じる。
奇しくも彼もまた、英雄と呼ばれることになった。きっと彼は皮肉にとらえるだろう。けれども友のために、全力を尽くして奮闘した彼は、どんなに残酷な結果を迎えたと言っても確かに英雄なのである。
しかしこれはやはり、私の個人的な見解だ。世界がどう見るのかは解らない。けれども。
自分に自信を持つことを忘れてはいけない。彼が堂々としている限り、この物語は悲劇にはならないのだと、私は心から信じている。
―――――ノーマン・ネージスト著「『黄金の術師(ジャーム・エワ・トゥーロル)』と緑の英雄」より抜粋
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷