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絡結―からまりむすび―

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骨と朽ちた家は、ある日起きた大きな地震によって潰されてしまったが、地面が揺れる少し前に家から出ていた紗代はそれをじっと見ていた。土煙が消え、潰れた家を見たその時にはじめて、自分が泣いている事に気付いた。
それからどれくらい経ったのか分からない。
ようやっと涙が零れなくなり、重い瞼をあげてもう一度潰れた家の方を見るとそこには、例の少女がいてこちらを見上げている。しっかりとこちらを見つめ何かを口にしてー…。



と、そこで目が覚めた。
東向きの窓が明るい。朝日は安物のカーテンでは遮りきれず部屋を明るく照らしている。
そろそろ夏になるこの時期ではあったが、床で座ったまま寝たのでは体が痛くて仕方ない。起き上がり、いつでも出し入れできる翼も拡げて体を捻ればパキパキと音がなった。
「っ痛…、はー…」
翼からいくつかの小さな羽が落ちる。
それを見ながら、もう一度虚しい溜息をつこうとしたその時

「…」

少女と目が合った。

「―――」
ぽってりとした唇が開き、言葉にならない声が紗代の耳に届く。
まるで真水のように澄んでいるそれは、夢の中で聞いたものと同じだと思ったが、それは音を成していなかった。



<続>
作品名:絡結―からまりむすび― 作家名:月湖