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はちみつトースト

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どろりと蜂蜜が垂れた。
こんがりと焼けたトーストにたっぷりの蜂蜜を塗って食べるのが彼のお気に入りで、家に泊まりに行くと朝食にそれが必ず出た。
彼は流石に慣れているのか上手にそれを食べるが、自分はどうしても蜂蜜が垂れてしまう。
どろりと垂れた蜂蜜は手に落ち腕を伝う。
「また垂れてるよ」
そう言った彼を見るとくすりと笑って濡れタオルを手渡してくれる。
「ありがとう」
それを取ろうとトーストをお皿へ戻し、手を伸ばすと、彼はそのまま手を取り、濡れタオルを当て、拭い始める。
あまりに自然にそれをするので吃驚した。優しく、しっかりと拭う。
「食べづらい?今度からは別のもの出した方がいいかな……」
すっかり腕のべたべたを取り、指の股を丁寧に拭いながら彼が言う。
「食べづらいけど……」
くすぐったいような感覚に指がぴくりと動いてしまうが、彼はそれを気にする様子もなく一本一本几帳面に綺麗にする。
「けど?」
その手を止め、彼がこちらを見る。色素の薄い瞳は朝の太陽にきらきらと光る。
「好きだから、これでいい」
そう紡ぐと、彼はにっこり笑って、小指を拭って手を取った。
濡れタオルに冷えたその手を同じように冷えた彼が包み込むように握った。
「ありがとう」
彼は笑い、指先に軽くキスをした。
作品名:はちみつトースト 作家名:鶴見