豊満な国
カバンにはダイエット食品やスポーツ器具がタップリ詰まっている。
空港に降り立つと、周りは見るからに100kgを超えてそうな人たちばかりだ。
「これは、一攫千金間違いなしだな」
次の日から、街頭でダイエット製品を売り始めた。
物珍しさからか、すぐに通行客が集まってきた。
「このダイエット食品を食べればたちまち痩せますよ!」
「痩せるとどうなるのですか?」
「痩せれば、健康にも良いし、足も早くなるし、エレーベータで重量オーバーになることもなくなりますよ!」
すると、通行客はみんな笑った。
自分のジョークがうけたと思ったが、そうでもないらしい。
「この国の平均寿命は80歳です。みんな太ってますが健康的に太っているんですよ。あと、公共機関が発達してますし、経済状態も良いのでみんなゆとりを持った生活をしています。あくせくと走ったりする必要はないのです。あと、この国のエレベーターで重量オーバーがなった話なんて聞いたこともありません」
ダイエット製品を一向に売れなかった。
この国の住人は、みんな太っていることを受け入れて生活しているのだ。
商人はホテルに帰って作戦を練り直すこととした。
ホテルに入ろうとしたところ、自動ドアに頭をしたたかにぶつけてしまった。
何故か自動ドアが反応しなかったのだ。
やはりでっぷりと太ったホテルのドアマンが近づいてきたこう言った。
「大丈夫ですか、お客様?この国の自動ドアは全て70kg以上の人しか反応しないのです。そうしないと、野良犬などが入ってきてしますものですから…」
商人はその日のうちに、この国を去っていった。