遠藤のゲーム
入学式の校長のスピーチである。
それを聞いた生徒達は皆、面白いジョークを聞いた時のように、笑みを浮かべた。
中には吹き出してる者までいた。
ここは通称「バトルスクール」と呼ばれる優れた兵士を育成する学校である。
集められた12歳の少年少女達は30人のグループに分けられる。
そして、卒業までの三年の間に、様々な課題をクリアしなければならない。
課題でビリだったものは脱落、つまり退学となる。
最後に卒業できるのはクラスで一人のみである。
究極の競争社会に勝ち残ったものこそ優秀な兵士となるのだ。
もちろん全員このことは承知している。
親友なんてものを作ろうとしている生温い奴から落ちていくのは当然なのだ。
しかし、一人だけ校長のスピーチに笑わない生徒がいた。
彼はこう思っていた。
「校長は間違っている。他人を思いやることが出来ずに何故強い兵士になれるのだ?」
彼の名は遠藤。
バトルスクール創立以来、初めて一つのクラスから三人の卒業生が生まれるという偉業を成し遂げた中心人物である。
バトルスクールの規律「親友禁止」が揺らぎ始めた瞬間であった。