大人の言葉遊び(42)
透明なまま 深く沈みぬ
偶然の
ふりして幾度か
触れながら
いつしか繋ぐ手
目は伏せたまま
神様は 誰が誰かを 知らぬまま
チェスの駒にて 縁(えにし)を決めし
恋文を
結んで
放つ矢を追って
貴女の心に
先回りしたい
恋占い 水面にコイン 浮かぶとき
愛しき人の 面影もまた
湧き水を すくい取りたる 彼の人の
手から注がれ 恋の味付け
恋もまた 香りほのかに さりげなく
薄味のまま 飽きないように
傘のなか ためらいがちに 組んだ腕
肩先のしずく かわす振りして
繰り返す
小さな決心
ためらいと
言えずじまいの
言葉が溜まる
夜が来て 同じホームで 電車待つ
上りと下りに 引き裂く線路
作品名:大人の言葉遊び(42) 作家名:智樹