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水道代がかかる理由

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1月末のある平日の夕方頃、ドアを乱暴にノックする音がした。
ドアを開けると、疑わしげな表情を浮かべた大屋さんがニュッと顔を突き出してきた。
「ちょっといい荒川さん?今月の水道代のことなんだけど…」
と言って切り出したのは今月の水道代が5万円もかかっていることだった。
いつもは3千円くらいなのだが、今月だけ異様に増えているのを不信に思ったらしい。
「あー!それでしたらアレです。ちょっと洗濯機が壊れて漏水してたんですよ。でももう直したから大丈夫!ご心配おかけしました!」
「あらー、そうなの?でも去年も似たようなことがなかったかしら?確か、風呂が壊れたとかなんとか…」
「そうなんですよ!これだからオンボロアパートは嫌ですねぇ。いつもどこか壊れてる!」
納得がいかない様子の大屋さんをなんとか追い返し、一服をつく。
「そろそろうまい言い訳を考えなくっちゃなぁ…」
といって窓の外を見る。
窓の外の公園では子供達がキャッキャと騒ぎながらスケートを楽しんでいた。
自分はこの光景を見る時が、一番の至福の一時なのだ。
外で遊ぶ場所も少なくなってきた現代の子供達に、ささいなプレゼントを送る為なら、大屋さんに疑われることぐらい幾らでも我慢できるというものである。

その公園は何故か毎年この時期、夜のうちに水が張り、朝になればスケートリンクができることで評判だった。
作品名:水道代がかかる理由 作家名:葱奴