R.P.G.
勇者は立ち上がりながらそうつぶやく。
「しかも前のセーブポイントって結構前よ」
女戦士が兜の埃を払いながら愚痴っている。
「なんでもっとこまめにセーブしないんでしょうねぇ」
いつも最初に死ぬ僧侶はもう慣れたもので、戻る準備はできているようだ。
「せっかく稼いだ経験値やお金が全部パー!」
諦めきれない様子で魔法使いがわめき立てる。
ここはRPGの世界。
新しい町の直前で全滅した直後の勇者たちであった。
「…じゃあ、戻ろうか」
リーダーである勇者が先に歩きだすと、渋々といった感じで一同はもときた道を戻りはじめた。
歩きながらも怒り心頭でわめく魔法使いを僧侶がなだめている。
「とにかく雑なのよ!この持ち主は!計画性がないっていうか!」
「確かにそうですねぇ。前の町でも同じ町人に10回も話しかけてましたし」
「町の名の由来を10回も聞いてどうしようっていうの!」
大きな袋を背負った女戦士が話しに加わる。
「私なんて前の装備をいまだに持ち歩いてるんだぜ。しかも鉄の鎧だからメチャクチャ重いのよ!」
「私なんて道具袋のなか毒消し草で一杯ですよ。キアリー使えるので必要ないんですけどねぇ」
僧侶もやれやれといった感じだ。
そんな仲間達の様子を片目に、勇者は黙々と歩き続ける。
リーダーである自分が愚痴るわけにはいかないからだ。
「…さあ、セーブポイントだ!事前に敵モンスターの情報がわかっているんだから今度は町に着けるさ。着いたら、酒場で一杯おごるからもうひと頑張りしよう!」
勇者は仲間達の気を引き締めるためにそう叫んだ。
だが、次の瞬間世界が一変した。
ノイズのような極彩色の模様が広がり、全ての物が動きを止めたのだった。
いわゆる、バグった状態になったのである。
思わず、勇者は叫んだ。
「くそっ!またお母さんの掃除機がファミコンにぶつかったんだ!」