魔法使い、旅に出る
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ある日のことです。
日々ぐうたら過ごしている自称ぐうたら煙巻き魔法使い(魔法使い登録は火炎の魔女)かぴーのところに一本の電話が入りました。
「もしもし~、かぴー?ウチの女神さんがイセ教会に連れてけって言うのよ~」
電話をしてきたのはセンゲン教会のシスターでした。
うわぁめんどくせぇと思ったかぴーは速攻で言いました。
「寝言は寝てから言えや」
電話の向こうがピシッと音を立てシスターの声が一段と高くなりました。
「アンタ、そんな事言える立場~? 毎日ま・い・に・ちっぐうたらしてるアンタを庇ってんのは誰だと思ってんのぉ?」
「……ちっ。いついけばいいのよ?」
「今すぐよ」
ガチャンっと電話が切れました。
つーつーと鳴る電話をかぴーはしばらく見てましたが、ツカツカ窓に歩みよると部屋から見えるお山に叫びました。
「さくちゃん! 自力で行けよっ! 気がつきゃ勝手に出かけてるじゃないかっ!!」
『やぁよぅ。連れて行きなさい?』
きゃぴきゃぴしている女神さん。
「~~~~~!」
くぅそぅと思いながらかぴーは教会に向かうのでした。
☆
センゲン教会、シスター執務室にて――。
「シスター・シリトン、質問です!」
すちゃっと元気良く挙手。
「はい、かぴーさん?」
「サクッヤー姫神様をイセ本教会にお連れしたくても『器』が帰省中で居ません。どうしたら良いですか?」
かぴーの質問にシスターはきょとんとした顔を見せた。
そう、戦って癒せて尚且つ『器』に最適な勇者はここシゾーカから遙か遠くアオモッリーに帰省中。
器とは依代を意味している。
「え? 何を言っているの?? 別にアナタでも構わないからアナタに話をしているのよ?」
「や、だからね。憑くと重くて疲れるから。なのにヒーラーの竜女(死神憑いてるけど)と勇者は居ないわけ。誰が私をカバーしてくれるのよ? どうせすんなりイセに着くわけじゃないんでしょ?」
竜女とは竜の血を引く女性のこと。
かぴーの旅仲間の竜女はタイミング悪く修行にこもったばかり。
「そうね」
シスターにっこり。
「そうデショ」
かぴーもにっこり。
「さくちゃんは訳あって漫遊をしてからイセに行きたいのだそうよ? つまり」
実は意味深な言葉を明るくシスターは言った。
「これは公務に準じます♪」
ニコニコ笑顔。
「それにヒーラーのひとりやふたり、知り合い居ないの?」
「そりゃあ居るけどさー。遠いしー金ねーしー」
「居るなら良いじゃない」
「話聞けよ!」
シスターの笑顔がやたら黒く見えたかぴーだった。
☆
「――と言うわけで、ヒーラーか癒やしの魔法使いを絶賛募集中なんです、犬さんどうす…」
「行く行く行くー! 行きたいー!!」
受話器から届く弾んだ声につられて口元が緩む。
「じゃ~、その内そっちに着くと思うんで待っててネ☆」
「待ってるね☆」
ルン♪と効果音が出そうな勢いだ。
さぁて出かけよう。
ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと帰ってぐうたらしよう。
かぴーは一歩を踏み出した。
クエスト
癒やしの魔法使い、犬と合流する
ヒント
犬はグーンマーに住んでいる