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おもかぴえろ
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novelistID. 46843
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徒然な日常

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 あーちゃんは一年の穢れを祓い日々の平穏無事を願いに毎年厄祓いをしているご家庭で育ったのだそうです。
 そんなあーちゃんが言いました。
「どっかいい神社、ない?」
 いい神社とは何を基準としているのか甚だ疑問を含んだ問いかけです、あーちゃん。
「は?」
「コレ、効力一年でしょ。新しいの欲しいし、厄祓いもしたいんだよね」
 信心深いお家で育った為か、親元を離れてもお家の慣例には倣いたい様子。
 丁寧にテーブルに置いた御札を前にちょっと真面目に言いました。
「実はな、知念が最近、妙にヘンなモン連れてるからヤツと連んでる祐も連れて行きたいんだ」
「はあ」
 知念くんは三人の共通の友達で、幸か不幸か実体にも幽体にもひたすらイジられまくる愛すべきMの人なのです。
 あーちゃんはなんとなくわかる人なので、良くないものは避けたいのだそうです。

 事情を話したおねいちゃんには霊峰富士のお膝元に居るんだから浅間神社で良いじゃない、と言われた一行でしたが、引率がなっちゃんだと知ると無理ね、とあしらわれてしまいました。
 サクヤさんとなっちゃん、仲良しと言えば仲良しですがお仕事が絡んだ関係ではないのです。
 おかしなもので、人同士に相性が有るように神様と人も相性が有ります。
 特になっちゃんは加護の関係で辿り着ける神社仏閣が限られています。
 なっちゃんのお世話になっている神社は遠州一の宮として格式のある事任八幡宮。
 主祭神は言霊を司る女神、コトノマチヒメ。
 実はなっちゃんとマチ媛は相殺する関係だったりします。
 故になっちゃんが自力で辿り着ける数少ない神社の一つなのです。
 そんなこんなでなっちゃんの引率でプチ団体は良く晴れた日曜に厄祓いに行くことになりました。

 いざ八幡さんに着いて厄祓いをお願いをして待つこと暫し。
 用意が出来、案内に来た宮司さんに宜しければ、ご一緒に如何ですか? と誘われ、では失礼しますといそいそと同席したなっちゃん。
 粛々と読み上げる宮司さんの祝詞を聞いてると、横にちょこんとマチ媛が来ました。
(あれ、まっちゃん)
『なぁに、あれがそ?』
(そ。悪いね、信心深くないヤツらだけど頼むよ)
『ま、良いけど。何よ、あんた酒の一つぐらい持って来なさいよ、気の利かない』
(……飲みたいなら飲みたいって先に言ってよ。次来るとき、持って来るわ)
『宜しく』
 言いたいことだけ言って戻って行ったマチ媛。
 暫くしてなっちゃん、んん? と首を傾げました。
 なんであたしが遠路はるばる二時間もかけて酒持って来なきゃならないんだ??
 約束しちゃったから持って来るけど、あたしの目の前で一生懸命祝詞を上げてるこの人は??
 祭壇にも酒……王冠、封してあるのね、あはー。
 アレじゃね……。
 なんとなく同情を禁じ得なかったなっちゃん。
 富士錦かな喜平かな正雪も良いけど、英君も悪くないわ……と銘柄と味に思い耽っていたら、
「……つつがなく皆様の御祓いを終えることが出来ました。本日は遠方よりはるばるお越し下さいまして……」
 宮司さんの声にハッと我に返るなっちゃん。
 片付けを手伝い、丁寧にお礼を言って八幡さんを後にしました。

 後日、お酒片手に八幡さんにやってきたなっちゃん。
 御神酒として宮司さんに上げて貰い、王冠を外してお供えしました。
『♪』
 ご機嫌のマチ媛、宮司さんが下がるのを今か今かと待っています。
 酒瓶の中身がいきなり減ったんじゃびっくりさせてしまうので、マチ媛なり(マチ媛に限らないけども)の気遣いです。
『飲む?』
(車だから無理。少なくて悪いけど堪能して)
『そ? じゃ』
 嬉しそうなマチ媛。
 見る見るうちに減るお神酒。
 そんなマチ媛を眺めながら早く依代選べばいいのに、と思ったなっちゃんでした。

作品名:徒然な日常 作家名:おもかぴえろ