徒然な日常
青い子がへばり憑いて早二ヶ月ほど。
悪さしなきゃ放置でイイかとほったらかしてたなっちゃん。
元々の依る体質が災いして他にも依って来ちゃって流石に頭痛肩凝り吐き気倦怠感とコンボ決められちゃ適いません。
「海~、海いきたい~……」
一人布団で呻くなっちゃん。 早速ケータイをピコピコ。
「モシモシ~? ヒマ?」
「ヒマだけど。どした?」
掛けた先は祐ちゃん。
公私共になっちゃんとは密なお付き合いの一人です。
「海に行きたいです。連れて行ってくらはい」
「は?」
「海だよ。お天道様も出てるし行きたいのー」
「はぁ、イッテラッサイ」
恐らく寝起きの祐ちゃん。
気のない返事です。
気持ちを察するに一人で行けよ的な。
それを読んだグロッキー気味のなっちゃん、散々ゴネて海に連れて行って貰うことになりました。
祐ちゃんの愛車に乗りやってきたのは夜はナンパで有名な海水浴場。
着くなりさっそくボトムの裾をまくり上げ、海へ突進するなっちゃん。
「うひー! うはははー!」
波が砂を運んで足が埋まる独特の感触に奇声が飛び出てます。
波打ち際で騒いでるフリして身に憑いてるのを流し浄めていると車で一服してた祐ちゃんもやってきました。
「なぁ」
「んー?」
「なんか黒いもん引っ付けてた?」
祐ちゃんの言葉にニマリと笑って、
「ウフー☆」
耳のない猫型ロボットさながらの声音で返事をするなっちゃんの後ろ頭に手刀が一発。
「オマエはノブヨかっ」
「痛いなぁ」
「質問に答えなさい」
あらー、これはこれは、となっちゃん苦笑い。
「海って偉大なんだよー。キレイキレイにしてくれんの☆」
ニカッと笑って何気なく下向いたなっちゃん、祐ちゃんの足下を視て思わず言いました。
「……流しに来てんのになんでアンタ、マーキングされてんの?」
祐ちゃんの足首には髪の毛と釣り糸がそれぞれ絡まっていました。
「……やっぱな」
渋い顔の祐ちゃん。
聞くと足が重たかったそうな。
足首にくっきり残るマーキングを灼くなっちゃんに祐ちゃんは更に続けます。
「なんか見られてる気がすんだわ」
そらそうだろ。
思っても説明が面倒くさいので口に出さないなっちゃん。
「遊びに来ただけだよーって思ってたら大丈夫さ☆ ……よし終わり」
よっこいしょ、と少々年寄りくさく立ち上がったなっちゃんは辺りを見渡す祐ちゃんに声を掛けました。
「用も済んだし、日が傾く前に帰ろ」
日が傾くと厄介なのは昔も今も変わらないものです。
ふと波打ち際を見ると鰯の群が浅瀬を回遊しています。
「あらー、ダレのお使いかな? ありがとね、また来るね」
目的を果たしてるんるんのなっちゃん、後日おねいちゃんに「海は人によるでしょ」と言われました。
「ちゃんとフォローしたも!」
「当然の義務です」
解っててやらないの、と怒られたのでした。