木星と金星
今夜は木星と金星が最接近する。
「近いな」
「近いわね」
二人の男女が同時に呟いた。
少し驚いた風にお互いの顔を見つめ、微笑む。
そして二人並んでまた星を見始める。
時刻はそろそろ夜中の12時。
男は心の中でふと思った。
あんなに近くに見えるのに、本当は離れている。
重なることは永遠にない者たち。
まるで自分達みたいだなと。
だが、男はそれを口にすることはなかった。
言葉にすることで、実感するのが嫌だったのだ。
「まるで私たちみたいね」
ふっとに彼女がつぶやく。
自分の気持ちが伝わったのかと思い、驚いて彼女を見ると無邪気な顔で笑っている。
時刻は12時。
触れるか触れないかわからないぐらいのキスを交わす二人。
男は思った。
自分たちは離れることはない。
ずっと近くにいるものだと。
しばらくの間互いに見つめ合っていたのだが、彼女の方から切り出した。
「また来週会いましょう」
「あぁ」
そして二人は別れた。
今日は金曜日。