グランボルカ戦記 外伝2 前日譚:アリス
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アリスが住んでいた家は先に来ていたオデットが掃除をしてくれたおかげで半年間誰も住んでいなかったとは思えないほどに整っていた。
「オデット、久しぶりね。・・・と、いってもあまりそんな気がしないのだけど。」
「そうですねぇ。しょっちゅう手紙をやり取りしてたせいか半年ぶりって気がしません。」
オデットの言葉に微笑んで、アリスはオデットが作ったシチューを口に運ぶ。
「食事が終わったらこの半年間でわかったことを色々話しましょう。手紙のやりとりだけだと、わからないこともあるでしょうから。」
「そうね、それもいいけど。あなたの半年間の話も聞きたいわ。今のところエーデルガルド姫もリュリュ様もこちらで保護しているから万が一にも扉を開かれるようなことにはならないだろうし、じっくりやりましょう。」
「あ、わたしもアリスの話聞きたいです。手紙に書いてくれてましたけど、なんだか素敵な男性がたくさんいるみたいですし・・・一体誰が本命なんですか?」
「素敵・・・誰が?」
心底意味が分からないと言った風にアリスが首を傾げる。
「ええっと、アレクシス皇子とか。」
「優柔不断なところがねぇ・・・。」
「ゆ、ユリウス王子とか。」
「まあ、有望なんだけど、シスコンだしねえ。しかも年下はちょっと。一応お付き合いをしているにはしているけど、本命っていうわけではないわよ。」
「あ、そうだ。じゃあヘクトールさん!」
「いやいや、ペット付きはちょっと。」
「アンドラーシュ侯爵。」
「子持ち。しかも娘は私たちと同い年よ。あと、あの人だけは生理的に無理。」
「・・・じゃあ、やっぱり相変わらず?」
「もちろん。私の本命はずっと変わらないわ。」
アリスはそう言って照れくさそうに笑いながら、シチューを口に運んだ。
作品名:グランボルカ戦記 外伝2 前日譚:アリス 作家名:七ケ島 鏡一