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 彼女いない歴五年の颯太、これは千載一遇のチャンス、やっと運命の女と出会えたかもしれない。もう浮き浮き気分で、夏魔が待つ別荘へと訪ねた。

 しかれども……オーマイゴッド!
 これが最初に発した言葉だった。
 夏魔がいう別荘、それは別荘ではなかった。手短に言えば、廃墟だ。だが、約束は約束、颯太はドアをノックし、玄関へと入った。するとそこに、多分何かの化身か、美姫な夏魔が妖しく微笑み立っていた。

 颯太にぞくぞくと戦慄が走る。そんな颯太の手を、夏魔がぎゅっとつかむ。そして颯太を中へと誘導する。だが夏魔はなにも喋らない。それでも暖かくもてなしてくれた。二人は透明な時間の流れの中で食事をし、ワイングラスを傾けた。
 颯太は元来騒々しいのは苦手。そのせいか、夏魔とのこの幽寂な一時、蜘蛛の巣だらけの廃屋ではあるが、まるで繭の中にいるような心地よさを感じた。

 そして深夜、それは狼の遠吠えが聞こえてきそうな夜だった。夏魔の甘美な誘いで、颯太は火照(ほて)る女体に身体を重ね合わせた。
「あっ」
 夏魔の喘ぎは一声だけだった。しかし、それは颯太との運命を受け入れた夏魔の決意、颯太はそう解釈した。