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八峰零時のハジマリ物語 【第二章 010】

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  【010】


「零時くん、わたしと一緒に寝て……ください」
「な、なな……」

 俺は舞園利恵の中にいる『幽霊の正体』を見破るべく、舞園の家に今、来ており、そして舞園が俺にベッドで一緒に寝ようと促されてる状況に合間見えていた。
「だって……わたし、ちょっと怖くて」
「ま、舞園……」
「だから――寝付くまでだけでいいから、それまで横で寝てて欲しいの……ダメ?」
「うっ!」
 か、かわいい。
《か、かわいい》
「わ、わかったよ。と、とりあえず、そのくらいならどうってこと、ね、ねーよ!」
 この時点で、シッダールタも零時もどっちも同じようにパニくっていた。
「あ、ありがとう」
 こうして俺と舞園は一緒にベッドで寝ることとなった。

――今日、初めて会ったばかりなんですけど。

 電気を消して、二人とも横になり目を閉じた。
 しかし、俺は全然寝ることなんてできるはずもなかった。
 だが、しばらくすると横で、すぐに舞園の寝息が聞こえてきた。
《は、早いな、こいつ。もう、寝たのかよ?!》
「なるほど……よっぽど安心したみたいですね」
《ど、どういうことだよ?》
「ふふ、別に。さーて、では早速始めますか?」
《何を?》
「今日はそのために来たんでしょ? 行きますよ……舞園ちゃんの『潜在意識』の中へ」
《そ、そうか。よ、よし!》
 すると、シッダールタは右手の手の平を開き、それを舞園の額に当て、何かを唱え始めた。

――瞬間、俺の身体が光に包まれ発光したかと思った途端、俺たちは『舞園の潜在意識の中』にいた。

「ここが舞園ちゃんの潜在意識の中か……」
「へぇ~」
 そこは見渡す限りの「灰色の空間」だった。俺たち以外はすべて「灰色」だけが存在していた。俺たちは立っているのか、横たわっているのかさえわからないくらいの「灰色」だった。
 この前の自分の「潜在意識」と同じ感じだった。
「な、なあ、シッダールタ」
「なんだ?」
「自分以外の奴の『潜在意識』の中も、自分のときと同じように『灰色』ってことは、人間の『潜在意識』の中ってのはこういうもんなのか?」
「ああ。ちなみに、零時くんとワタシもこの『潜在意識』の中では別々に個体を保持できる。理由は『魂・エネルギー体』の状態に戻るため、『肉体』という『器』を必要とせず、『概念』で『自分の個体』を産み出すことができるからだ」
「意味がわかるようにしゃべってくれ」
「……要するに、生身の身体がここではいらないからワタシと零時くんはこうやって別々になって会話ができているということさ」
「ああ、なるほど」
 そう……今、舞園の「潜在意識」の中では、俺とシッダールタは元々の自分の姿になっていた。
「それにしても……もし『悪魔に取り憑かれている者』であれば、種類にもよるが、だいたいはもっと『黒』を基調とした色で構成されている空間がほとんどのはずだが……」
「てことは、舞園に憑いている『幽霊』ってのは、魔界の悪魔じゃないってことか?」
「早計はあまり良くないが、そうなのかもしれん……な!」
 そう言うと、シッダールタは右手を上に掲げ、また何かを唱え始めた。そして、
「出てこい、ここにいるモノよ!」
 すると、シッダールタの右手の平から無数の『光の矢』が飛び出し、『灰色の空間』の至るところに散っていった。
 その時、どこからか『キャッ!』という『女?』の声が聞こえた。
「そこかっ!」
 そうしてシッダールタはその「声の方向」に飛び出していく。
 すると、この『灰色の空間』の端のところに一人の『女性のシルエット』が見えた。
 その女性もこっちに気づいたようで、急いでさらに上へと逃げようとする。
「遅いっ!」
 シッダールタは、いち早く、その女性の動きを察知するやいなや、異常なスピードですぐに先回りをして女性よりもさらに上へと飛び出し、女性の目の前に立ち塞がった。
 以前の「通り魔の悪魔」とは「段違い」の凄まじいスピードだった。
「バカめ! このシッダールタ様から逃げられると思って……」
「えっ? シッダールタ……様?」
「ぬっ?」
「し、シッダールタ様~~~! やっと会えたのだぞ~!」
「な、何だ?」
「えっ? な、何?」
「わ、わたしです! 覚えておりますでしょうか? マリア……マリア・マグダレネなのだぞ~!」
「マリア・マグダレネ? あっ!……その『なのだぞ』語尾……お、お前、もしかして『天界の女王アマテラス』の『筆頭従属天使(ファースト・アテンダント)』のマリアか?」
「はい! そうです! お目にかかれて光栄ですなのだぞ~!」
「あ、ああ」
「おい! おい! シッダールタ」
「んっ?」
「誰だよ、このメイドの格好したお子ちゃまは?」
「あ、ああ。この子は『天界の女王アマテラス』の側近の天使だ」
「天界? 女王? 天界の一番偉い人のこと?」
「そうだ。そして、この子はその側近の天使だ」
「こ、これが! このガキが? でも、なんでメイド服の格好なんだ? お前の趣味か?」
「なわけあるか! 元々このメイドの格好は天界の召し物で、人間界がマネして作ったものだ。逆だ、逆」
「へぇ~、そうなんだ」
「ちょ、ちょっと待て! 人間、お前は何なのだぞ!」
「あぁ? 何だ? 何でシッダールタと俺との対応にそんなに差が出るんだ~?」
「当たり前なのだぞ! お前は『ただの人間』だろうが! シッダールタ様は『天界の救世主(メシア)』なのだぞ! 本来なら人間ごときが、そうやって一緒に横に立つことはあり得ない現象なのだぞ~!」
「なのだぞ、なのだぞ、うるせーなー。天使ならもう少しちゃんとした言葉しゃべろよ」
「シッダールタ様、こいつ『死ぬよりツライ天罰という名の拷問』をしていいのかなのだぞ?」
「いえ、マリア……それはやってはいけない。そして、最後に『拷問』と本音が出てましたよ。気をつけるように」
「失礼しましたなのだぞ~」
「お前ら、本当は神様と天使じゃないだろ?」
「さて……とりあえず零時くんのことはその辺にでも置いといて」
「おいっ」
「しかしマリア――どうしてお前がここにいる? 天界の女王アマテラスの筆頭従属天使(ファースト・アテンダント)なら、本来は『どういう事態』になろうとも、アマテラスの側から片時も離れることはしないはずなのでは?」
「そうなのだぞ。だからわたしはここにいるのだぞ~」
「んっ? ということはマリア……まさか」
「はい……『天界の女王アマテラス』はここ人間界に転生しておりますのだぞ」
「な、何っ! ア、アマテラスはこの人間界に転生しているのか?!」
「はい。そして、アマテラス様の転生されている人間は、この『舞園利恵』という人間が通う『私立秦氏学園(しりつはたうじがくえん)』の中にいますのだぞ~」
「な、何だとっ!」
「ウ、ウチの学校……?!」

『天界の女王アマテラス』……つまり『神様』がウチの学校にいるってこと?

 何か、話がさらにややこしくなってきてないかい?

 おーい。