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すべて暑さのせいにして 2

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コンビニで適当にアイスを買って家に帰り、自分の部屋に戻り椅子に座る。
アイスをかじる。ヒヤリと冷たくなる口の中。と同時に思い出される先ほどの光景。

ぽたりとアイスが解けてしずくとなって下に落ちる。

「……」

1つ目のアイスを食べ終え2つ目に手を出す。
何がこんなに自分の中でもやもやしているのか。
笑顔を久しぶりに見た気がしたから気になっているのだ。そうに違いない。
あいつが誰と笑っていようが自分には関係ないのだが。
そう結論をだしアイスをかじる。

「………」

なんだかいやな気分だった。


「ねぇ」

いきなり頭をガシリとつかまれ何事かと思い振り向けばそこには不気味な笑顔を浮かべている幼馴染。

「……」
「私のアイスがないんだけど順平」

顔を手に挟み込まれ力ずくで上に向かされ、カチリと目線があう。
こちらは椅子に座っているわけだし必然的に見下される状態になる。
頭を掴まれているだけでも痛いのにさらに無理やり上を向かされたものだから痛くてたまらない。あ、痛いまじで痛い。か弱い女の子とは無縁の存在なんだから力加減をどうにかしてほしい。

「買っておいてって言わなかった?ねぇ」

にこにこと笑いながら言ってくる。がその裏には怒りがあるだろう。
別に自分が悪いわけではないのだがなんだか気まずくなって思わず目をそらす。

「図々しい女の分を買うほど俺には経済的余裕はありません」

アイスの続きをかじりながら言えば、それに腹が立ったのかなんなのか人が食べていたアイスをひょいと奪い自分の口へと運んでしまった。

「おい」

取り返そうと思うが時すでに遅し。
アイスは見る影もなくそこにはアイスがあったであろう棒の部分しか残っていなかった。
ある程度は食べてしまっていたとはいえ一口で食べきるには量が多かったのか人のアイスを横取りした本人は「あいたた」なんて言いながら頭をおさえている。ざまあみろ。

「なんか今失礼なこと考えてるでしょう」

ふふんと笑っていれば気付かれたのか不機嫌そうな顔をされる。
別に普段から見慣れているし今更怖くもなんともない。

そして思い出される先ほどの光景。
藤原くんとやらに笑いかけるあの顔。俺にはそんな顔何年も見せてないのに。
あれ?

「え、ちょ、うそだろ」

自分の思いに気づきひどく動揺する。
自分に笑いかけてほしいだなんて何あほなこと考えてるんだ俺は!
自分で自分の思考回路に驚く。

「なに、どうしたの」


普段あまり見せない同様の仕方のせいなのかひどくうろたえている様子だ。

ひとまずこのおかしな思考回路をどうにかしないと。
俺は立ち上がりそのまま自分の部屋を出る。
俺の意味の分からない行動に驚いたのかあわてて後ろを追いかけてくる。

「どこいくのよ」
「コンビニ。どっかのだれかさんにアイス奪われたし」

玄関で靴を履きながらそう言えば、ついてくる気なのか横に並んでいそいそと自分の靴を履いている。

「ついてきたって奢らないぞ」

顔をしかめながら言えば「えー!」と不満を漏らす。
あまりにも不満がうるさかったので仕方なく「100円のな」と言えば、

「やった!!」

すごく楽しそうに笑った。
きらきらとしたその笑顔に自分の中の何かがカチリと動いたのを感じる。


きっとこれは始まりなのだろう、でもまだ心のどこかでそれを認めたくなくて。
今はまだこの関係のままでいい。

だから、この顔の熱も、笑顔のまぶしさも。
すべてを暑さのせいにした。
作品名:すべて暑さのせいにして 2 作家名:吐息