すべて暑さのせいにして 1
そんな熱い教室から早く逃げたくてそさくさと帰りの準備をし廊下へ出る。
「順平!」
ああ、よりによってこの暑いときに一番聞きたくない声。
余計に暑くなった気がした。
パタパタと廊下を走る音が聞こえる。
足を止めるのも面倒くさい、そう思いスタスタと歩くのをやめない。
「……」
「ちょっと無視してんじゃないわよ」
「無視じゃなくて返事をしなかっただけでしょ」
「そうゆうのを無視っていうんでしょうが馬鹿!」
あぁもう、うんざりだどうしてこの女はいつもこうなのか…
人のことをそんなに馬鹿馬鹿いうものじゃないと習ってこなかったのか。
「あーはいはいそうですねすみません。で、何の用だよ」
面倒くささを全面に出して聞けば、
「先に帰ってて」
なぜか少し偉そうに腰に手を当ててそう答える。
そもそも一緒に帰る約束なんてしていないのだけれど。
別に家が近くて幼馴染だから一緒に帰ってるだけなのに。
それでもこいつはこうやって一緒に帰れない度に言ってくる。
「あぁ…はいはい」
「なにそれどうでもよさそうに!」
「だってどうでもいいし」
「むかつくー!!!」
適当にあしらいながらコンビニによって帰ろうかなと考えている時だった。
後ろのほうで「中野さん」と呼ぶ声が聞こえたのは。
「あ、藤原くん!!じゃあね順平。コンビニ寄るなら私のアイスも買っておいて」
そう行って藤原くんとやらのもとへ走って行ってしまった。なんて図々しい女だ。
何か一言言ってやろうかと思い走っていったほうを振り返れば藤原くんとやらの横で笑っていた。
チクリと胸が痛んだ気がしたが気のせいということにした。
暑さのせいでとうとうおかしくなってしまったのかもしれない。
くるりと向きを変えコンビニに向かうべく足をすすめた。
あんな図々しい女の分のアイスは買ってやらない。そう心に決めて。
作品名:すべて暑さのせいにして 1 作家名:吐息