子宮の記憶
この子が悪さをするたびに
この子の寝顔をみるたびに
産みなおしたい…
と 思ったことがある。
産み落とす痛みよりも
毎日のつわりのほうが
苦しかった。
それでも
おなかの中のお池に
鯉を一匹
飼ってるような感覚
そんな小さな
胎動を感じるたびに
この子は
あたしだけが頼りで
あたしだけが
守ってやれると
母になる悦びが満ちてきて
くじけそうになる心が和んだ
分娩台にあがり
さっきまで
子宮を泳いでた子を
この手に抱いたとき
感動とともに
空っぽになった
自分の腹が
淋しいと思った
きみに子宮の記憶はないんだね…