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Bataille de la saison

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《Printemps》


 薄紅色の花弁が風に乗って舞い落ちる。花弁は尽きることなく、大地を桃色に染めていく。
 その中を行く一人の旅人。赤いローブを翻し、花弁の洗礼を受けながら東を目指す。
 大地を踏みしめるたび、小さな花弁が舞い上がる。優雅で華やか。美しく調和のとれた世界。その中に現れる、暗い汚点。
 花吹雪にそぐわぬ不協和音(敵の影)。現れた影は牙を剥き、爪を研ぐ。
 音のない怨嗟の声。影は己と異なる姿を見て、一斉に襲い掛かってくる。
 ――己が身の危険も知らず。
 襲い来る影。その首を銀の刃で刈り取った。あるべきものを失う影。転がる首。薄紅色の花弁が舞い上がる。
 手の内にあるのは白銀の大鎌。白い柄と、曇りのない銀の刃が光る。身長と変わらぬ獲物を振るい、影たちを刈り取っていく。

 水平に薙げば胴が二つに分かれる。

 縦に振り下ろせば左右に分かれる。

 首に押し当てて引けばごろんと落ちる。

 愚かな獲物を湾曲した刃の内側へ。

 回転し勢いをつけて鎌を振るえば、影の上半身が飛んでいく。

 思わず口元に笑みが浮かぶ。獲物を振りおろせば影が倒れる。森を駆け、舞うように、踊るように、影たちを刈り取っていく。

 薄紅色の花弁が風に乗って舞い落ちる。美しい色。美しい景色。それにそぐわぬ敵の影(不協和音)。
 邪魔なものは、刈り取ればいい――

 大地に横たわる、目障りな黒い影。刈り取られ、塵となって消えていく。
 ――不協和音は消えただろうか。最後の一体を刈り取って、旅人は銀の大鎌を下ろす。

 影の消えた大地は薄紅色。染み一つなく世界を彩る。

 そう。世界は美しい。それを穢すものは刈り取ってしまえばいい。旅人は銀の大鎌を背負い東を目指す。

 消してしまいたい、不協和音(仮面の男)を刈り取るために。
作品名:Bataille de la saison 作家名:紫苑