ある雨の日に.
よくある話なんだけどさ
冷たい雨の降る夜だったね
初めて君に会ったのは
フルフルと
細い身体を震わせて
ずぶ濡れになって座り込んでいた君を
僕は最初
猫だと思ったんだ
近づいて手を差し伸べたら
やっぱり
猫みたいに僕を警戒していたね
その瞳は誰も信じず
だけど
心の底から
温もりに飢えていた
「怖くないよ。こっちにおいで」、て
声をかけたら
やっぱり君は猫のように
しばらく驚いた表情で
僕を見ていたっけ
恐る恐る近付いてきて
僕が優しく君の頭を撫でてあげたら
君は泣き出したね
初めは小さく
遠慮がちに
「もう大丈夫だよ。怖かったね」、て
僕が言ったら
君は大声で、泣いたね
寒さと寂しさで
震えながら泣きじゃくる
猫みたいな君を見てたら
何故だか僕も
泣いてしまったよ
きっと、
人は誰しも温もりに飢えていて
それは僕もおんなじだったんだね
よく晴れた朝
目を覚ますと
やっぱり君はいなかったね
猫のような君
雨が降ったら
また、ここへ帰っておいで