シロクロモノクローム
最終話:おわってはじまる物語
いつもどおりのいつもの休みの朝。
なにも変わらぬこの世界。
時計を見て、その針が指している時間に驚いた。
ベッドに入った時間から計算して、約半日も寝ていたみたい。
なるほど、体が重たいわけだ。
なにかおかしな夢をみたような気がする。
どんな夢だったか、どうも思い出すことができない。
けれど、なにか不思議な余韻のようなものが、心を満たしていた。
それがなにか、分からない。
頭ではわからないけれど、心ではわかっているような気がする。
説明できないから、全然理屈は通らないけれど、そうとしか言えない気がする。
下の階からいい匂いがする。もう昼だから、昼ごはんをお母さんが作っているのだろう。そういえば、お母さんとしばらく話していなかった。お父さんとも。
くだらないことで口をきかなくなって、もうしばらく経っている。
理由は分からないけれど、無性に二人と話したくなった。
自分が思っていること、感じていること。
無性に話を聞きたくなった。
お母さんと、お父さんが思っていること。
怒っていたら、謝ろう。
勘違いしてたら、理解し合おう。
怖いけれど、向き合おう。
ぼくという存在は、世界に一人だ。
けれど、世界はぼく一人じゃない。
求める事を、怖がるのをやめようと思う。
求められる事を、受け入れようと思う。
見てもらうために、見つめよう。
世界を諦める事を、僕は諦めることにした。
その先に、自分を受け入れてくれる誰かがいると信じて。
―おしまい
作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景