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シロクロモノクローム

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第十話:登録完了



「よし、それじゃ今からお前のユーザー登録をする」
クオリアさんは、こほんと咳払いを一つした。
そして、椅子を出した時のように、何かぶつぶつとつぶやき始めた。妙な緊張感が流れる。ぼくはクオリアさんがなにをやっているのか、とても聞きたかったけれど、とても聞けるような雰囲気ではなかった。
クオリアさんは何かをつぶやきながら、腕を軽く上げ、まるでマジシャンの様に、手首の部分をくるくると2回ほど回した。すると、手のひらに少し大きめの、黒いマイクが現れた。
そのマイクを、クオリアさんはぼくの顔に向けて言った。
「準備が整った、後はナナ、お前の声をパスワードにする。このマイクに、自分の名前を言ってみろ」
ぼくは言われるままに、先ほど決めた自分の名前を言った。白の世界に、マイクを通した自分の声がエコーした。
そして、沈黙。
「なにも、起きないですね。本当にこれでいいんですか?」
ぼくは不安になってクオリアさんに尋ねる。
「まあそう焦るな、認識には少し時間がかかるんだよ。あと10秒待て」
ぼくは心の中でカウントする。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。
【認証完了―ユーザー名"ナナ"登録完了】
突然、空中に大きく文字が浮かんだ。そして、ゆっくりとその文字は形を変えていく、文字はバスケットボールほどの大きさの、透明な水色の球体になり、吸い寄せられるように僕の元に来て、ぼくのお腹の前15センチあたりで静止した。
「登録完了だな」
茫然としているぼくをよそに、満足そうに、クオリアさんはそう言った。

作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景