月影町の怪談
「俺の事は何を言われてもいいけど、千歳さんの事を悪く言うのは止めてくれ。あの人は何も変な事はやっていないよ。」
恵は俯いた。
「清光君…。」
「…!」
その時、清光はゾクリと背中に寒気を感じた。
間違えない…この感じ、何かいる…。
「ねぇ、幽霊が出たゴミ捨て場ってどこにあるの?」
「この行った先よ。」
紅葉が方向を指さしながら言った
「ここは危ない。戻ろう。」
「え?」
「…帰りたきゃ一人で帰れ。俺は行く。」
「あ、待ってよ!」
二人は行ってしまった。
清光はため息をつくと二人の後を追った。
「何もなきゃいいけど…」
「ここか…。」
ゴミ捨て場は不気味なぐらい静かで他の場所とはなんだが空気が違った
「ね、ねぇ帰りましょ…私なんだか怖くなってきちゃった…。」
紅葉はカタカタと震えながら二人の服を掴んだ。
「そうだな。北嶋君、もう行こ…。」
清光がそう言った時だった。
グス…グス…
「「「!」」」
どこからか泣き声が聞こえた。
三人の体は金縛りにあったように動かなくなった。
「な、何?」
「うあああ!」
恵の足にあの男の子の幽霊が血まみれでしがみ付いていた。
「寂しいよ…寂しいよ…。」
「恵!」
「北嶋君!止めてくれ!僕たちは何もしない!」
二人は助けに行こうとしたが、金縛りで動く事ができない
幽霊に声を掛けたが聞こえていないようだ。
「くそ、どうしたら…!」
清光は自分の腕にはめている千歳の数珠を思い出した。
「これなら…ってあ!」
震える手で数珠を腕から取ると、男の子に向かって投げた。
「ああああああああああ!」
パアッと数珠が光だし、男の子の体を包んだ。
男の子は叫び声を上げると雲雀から離れた。
「うっ…寂しいよ…痛いよ…。」
男の子は先ほどの恐ろしい姿と変わり、普通のどこにでもいる普通の子供だった。
男の子の格好は、シャツと短パンだけでよけい細さを強調させている。
そしてただ悲しそうに泣いていた。
「この子は…。」
「お前達!」
後ろから声が聞こえ、三人が振り向くとの美園と千歳が走ってこちらに向かって来た。
「大丈夫だったか?どうしてここにいるんだ。」
「先生〜!」
紅葉と雲雀は美薗に半泣きになりながら抱き付いた。
「千歳さん…。」
千歳は少し怖い顔をして清光を見た。
「美園が連絡くれたんだ。旧校舎に子供達がいるって。ここは老朽化が進んでるし、沢山幽霊がいるから清光みたいな子が来たら命が危ないんだ。駄目じゃないか。」
「ごめん…なさい。」
無事で良かったと千歳は清光の頭を優しく撫でた。
そして落ちていた数珠を拾うと、まだ泣き続ける男の子に近づくとそっと抱き締めた。
「もう痛くないからね。安心して大丈夫だよ。」
男の子は泣き止むとスッと消えた。
恵が息を呑んだ。
「千歳さん、あの子は…。」
「きっと昔、戦争で死んでしまった子だろう。可哀相に。あんなに小さな子が一人で苦しんで死んでいったんだね…。」
千歳は悲しそうに言った。
帰り道、千歳は皆を自分の車で送っていた。
「そういえば。先生と千歳さんって知り合いだったんですか?さっき呼び捨てしてたし。」
「ああ。幼馴染でね。昔は一緒によく悪さをしたもんだ。」
懐かしそうに千歳は行った。
「なぁ、」
雲雀は顔を赤くしながらボソリと言った
「さっきはごめん…。助けてくれてあ、ありがとよ…清光」
「!北嶋君」
恵はぷいっと顔を反らすと名前でいいと小さな声で言った。
「全く素直じゃないんだから。」
紅葉は呆れた様に言うと笑った。
清光も、思わず微笑んだ。