愛
ある所に2人の夫婦がいた
ある時妻が流行り病に罹った
妻は村の外れの小屋に隔離され、夫は彼女を救うために医学を学ぶ・・・
彼女を治す
それだけのために私は人生を捧げた
病気が治れば私と共に暮らせる
あの薄暗く埃臭い小屋から出ることが出来るんだ
共に太陽の元で愛を語り合い、風のささやきに耳を傾けることが出来るようになる
待っていろ、すぐに治してやる
村人たちのことは許してやってくれ
彼らも悪気があってお前を隔離した訳ではない
彼らも恐ろしいのだ、愛する者が流行り病にかかるのが
すまない来るのが遅くなってしまって
顔色が悪い?大丈夫だ、安心しろ
私のことよりお前は大丈夫か?寒くないか?
無理してはいけない、お前は病気なのだ
ほら新しい毛布と食事だ
喜べもうすぐ薬が出来るぞ
お前を治るのだ
ただもう少し待ってくれ、最後の材料がなかなか貴重な品で手に入らないのだ
だが安心しろ、友が手に入れてくれたのだ
後は彼が戻ってくればすぐに薬を作ってやる
もう少しの辛抱だ
やっと、やっと出来た
これで彼女は治る
待ってろ今行く
嘘だ
彼の努力虚しく彼女は息を引き取った
嘘だ
彼の眼には何も映っていない
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ・・・・・・
男はその後彼女の死を乗り越え偉大な医師となる
死の瞬間彼女は何を思っていたのだろうか少し見てみよう
ごめんなさい、貴方・・・私はもう駄目です
短い間でしたけど貴方と暮らした日々は私の宝物です
けれど貴方が私のために遣ってくれた日々を思うと私はいたたまれなくなります
次生まれ変わったら、貴方にはうんと嫌われよう
私のために命を使うことなく幸せな人生を築けるように
だからまた私と会って下さいね
彼女の想いは彼に届くことはない
だが彼女の想いは神の元へ届けられただろう
気の利いた天使が彼女のために少しだけプレゼントを添えて
赤い糸が解けないよう天使は祈る