永遠の夏休み
その本の題名は[謎が多い都市伝説]と言う本だった、いやどちらかと言うと研究資料的な本だ。
栄は次々にページを飛ばし、145ページのところで手を止め、指さす。
「ほら!ここ!見て、永遠の夏休みは実在する都市伝説なんだって、もしかしたらつーくんはその都市伝説に囚われちゃったのかな?」
栄は僕をバカにしてる感じだが、僕は別のものに目がいってしまった。
「永遠に年はとらないが、記憶はなくなる!?は?」
と言った瞬間、栄はふざけるのをやめ、マジメな顔で本を手に取る。
「ふーん。じゃあもしかしたらつーくんだけは記憶が消されてないのかもね。それともこれが最初だから?」
栄はずっと一人でブツブツ言っている。が、僕は何を言っているのか分からないので静かに待っている。その間、僕は今までの記憶と言う記憶を探ったが、いつもの通り平凡な記憶だけで、特に異常はなかった。
と、栄がなにやら奥の部屋に入ってしまった。
「ねぇ栄!どこ行くの?」
返事は返ってこなかったが、何をしてるかは分かった。
栄はイキナリ日記を付け始めたのだ。
そして一人言を言ってるのも分かる。
「いつあたしの記憶が消えるか分かんないからね。こうしておけば大丈夫だろ」
僕はふすまを開け、こう言った。
「大丈夫、僕は忘れないよ」
僕は優しく笑い、栄も優しく笑う。
そしてまた夏休みが始まった。