空
ここには空なんて無かった。
青い大空なんて夢のまた夢。
けれど貴方はそれを求め続けた。
手に入れる事は決して出来ないのに。
鳥たちが囀り、木々が風に乗って会話をし、太陽が燦々と輝く・・・
そんな世界は全て御伽噺だと思っていた。
貴方はなぜ私のために頑張ってくれるの?
なぜ危険を顧みずに死地へ向かうの?
私の夢のためにそこまでしてくれるの?
貴方が傷だらけで帰ってくる度私の心は悲鳴を上げるのよ?
お願い、私のために頑張るのはもう止めて
何故なの、何が貴方を駆り立てるの
何故なの、お願い教えて
空なんて見えなくてもいい
太陽の光なんて浴びなくてもいい
貴方が無事で居てくれるならそれでいいの
私が諦めた夢を何故・・・
やめてよ、諦めた夢を・・・もう一度見させないでよ
あと少しで空を見る事が出来る・・・?
けれど、それは貴方を失うかもしれない・・・?
貴方と私の夢を天秤にかけろって言うの!?
貴方が居なくなったら私はどう生きればいいのよ・・・
ねぇ、もうやめましょう
私は貴方と居る事が出来ればそれでいいの
お願い、もうやめて
貴方を失いたくないの
貴方を犠牲して手に入れた空なんていらない
必ず戻ってくる・・・?
嫌よ、絶対に行かせない
ほら、貴方は帰ってこない
なのに私の頭の上には空が広がる
貴方が自分を犠牲にしてまで私にくれた贈り物
憎い・・・憎い・・・なのに、なんでこんなに綺麗なのよ
ねぇ、帰って来てよ、こんなにも世界は綺麗なのよ
貴方が手に入れたのになんで貴方が居ないのよ
早く帰ってきなさいよ、約束じゃない
約束・・・?もしかして貴方・・・
嘘でしょ・・・あんな子供の頃の約束のために・・・
私だって覚えてなかったのに・・・馬鹿じゃないの
いいわよ、信じてあげるわよ
あんな昔の約束を守ってくれたんだもの
待っててあげるから早く帰ってきなさい
私の新しい夢を叶えるために