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八峰零時のハジマリ物語 【第二章 008】

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「はぁ~?!」
 俺はつい、声に出してしまった。
「きゃっ! ど、どうしたの? 零時くん」
「す、すまん。何でもない」
 お、おい! マジかよ!
《ああ、大マジだ。確認するなら早いほうがいい》
 ウ、ウソだろ……俺、女の子の部屋に上がったことなんてないぞ。
《ワタシだって無い。だから楽しみだ!》
 おい……お前、まさか……それが『目的』じゃないよ、な?
《あ、当たり前だろ? そ、そんな理由で言っているのではない。決して!》
 ああ……そう(棒)
《お、おい! 棒読みするな! 本当だって! まあ、確かに人間界の女の子の家に上がるのに関心がないとは言わない……だが、目的はそれよりも『彼女の中にあるモノの正体』を明かすことが第一だ!》
 わ、わかったよ。そうムキになるなよ。
《まったく……お前、ちょっと神様ナメ過ぎだぞ》
 まあ、相手によるだけ、だ。
《な……し、失敬な……》
「れ、零時くん?」
「あ、ご、ごめん」

 シッダールタと話している俺はあくまでも『内面での会話』でしかないので、舞園からすれば『ブツブツひとり言を言っている変なヤツ』に見えているんだろうな~と内心で思いつつ、しかし、俺は決断に迷っていた……、

「夜、舞園の部屋に行って確かめてもいいか?」

 と言う『言葉』をかけることに対して。

 すると――いきなり、シッダールタが、
「少し身体を借りるよ、零時くん」
 と言うやいなや、俺の身体はシッダールタと入れ替わっていた。
《お、おい! シッダールタ! てめえ……何やって……》
「舞園……」
「は、はい」
「今夜、お前の部屋に上がらせてくれないか?」
「……えっ?」
「はっきり言う。お前のその『幽霊』の正体は俺が突き止めてやる。だから、いいな?」
《シッダールタ、何言ってんだ、この野郎! 勝手なことすんなっ! だいたい、そんな簡単に舞園がオーケーなんてしてくれるわけ……》
「えっ……あ……はい」
《えっ?》
 あら、あっさり。
「よし、それじゃあ今日夜10時にお前の家に行くから」
「は、はい」
《えっ? いいのかよ?》
「俺はこれから準備がある。だから悪いが先に帰らせてもらうよ。じゃあな」
「あ……うん。そ、それじゃあ、後で」
 シッダールタ(俺)は、そう言って駆け足で公園から去っていった。
 舞園の頬が少し赤く染まっているように見えたのは夕暮れ色せいだろうか。

《お、おい! シッダールタ!》
「何だ?」
《この野郎、勝手に身体入れ替わりやがって! 返せ!》
「いいじゃないか、たまには」
《いいわけねーだろ! さっさと返せ!》
「わ、わかった。わかった。そうマジになるよ。はいよ」
 そう言って、シッダールタが指を鳴らすと、身体が入れ替り、元に戻った。
「お前……なんてこと言ったんだよ!」
《何が?》
「何がって……初対面の女子にいきなり『夜、お前の部屋に行くから』なんてこと言うやついねーだろ!」
《ここにいるじゃん》
「そういうことじゃねー! とぼけんな!」
《ふー、あのさ~零時》
「何だよ!」
《これはな……一刻を争うことかもしれないものなんだぞ》
「えっ?」
《彼女の中にいるモノが、悪魔なのか、それとも別の何かなのか……正直、俺にも判断がまだできていない》
「そ、そうなのか?」
《ああ。こういっちゃなんだがその娘の中にいるモノ……かなり『できる奴』かもしれん。俺が、こうも見破られないほど完璧に『気配(オーラ)を消す』なんて、なかなかできるものじゃないからな。もしかしたら、『やっかいな相手』かもしれん》
「マ、マジか……」
《ああ――ま、いずれにしても、そのままにしておくのは総合的には良いことではないからな。正体を知るのも含めて『不安要素』は早めの内に潰しておいたほうがいいに越したことはない》
「なるほど」
《というわけで、これから夜に向けて、いろエロと準備しておかなくては! キリッ!》
「……んっ? エロ……?」
《いや、そんな『何かを期待している』なんてことは一言も言ってないぞ?》
「……オマエな~」
《ま、まあ、何事も楽しまなきゃだぞ? 零時くん?》
「……」
 相変わらず、底の見えない……見せないシッダールタだった。

 まったくムカツク奴だが、でも、その『振る舞い』は、これから経験したことのないことへの不安を安心させるだけのものを感じた。
 それとも俺の勘違いなのか?
 だとしたら、俺に『人を見る目は無い』ということだな。
 それがわかったときは、一発こいつを殴ってやろう。

 俺はそう誓った。