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創世の物語

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今生を生き、死していく運命を与えた愛しき命たち
 汝らに多くの試練とその試練により与えられる感情を贈る
  常に試練に挑め…たとえ知らずに試練を受けていようと
   我らは汝らに苦しみばかりは、与えぬ…
    命ある限り生き、そして悔いなく生きておくれ
     生きとし生けるものは…すべてを受け入れることができる
      苦しみとは喜び
       多くには対がある
        それなくば理由はなく、ただの混沌よ

深紅の燃え盛る髪を持つ男が満月の両目に優しい光を宿し、両手に赤ん坊を抱えていた。
一人は男の子、もう一人は女の子だ。
双方とも男の長い髪を触り、遊んでいる。男は優しく慈愛の笑みをこぼし、赤ん坊たちを抱き締める。
「もうすぐだからな…もうすぐ、新しい場所に行けるよ。イザナギ、イザナミ」
黄金の装飾品と深紅の腰布が褐色の肌によく映えた男は、父親のように赤ん坊たちを包み込む。
乳白色の大理石でできたような宮殿は、日の光を優しく反射し辺りを照らしだしていた。
その宮殿の中庭の大きな噴水で泡がコポリと生み出された。するとその泡の中からなんと稚魚が生まれたのだ。それに男が気付くとふふふと穏やかに笑った。
明日には、この新たな『こども』がすでに生まれ命の園に生きる別の『こども』たちと出会う。きっと仲良くなるはずだ。
自分たちと同じ姿を与え、自分たちに近しいだが不完全な思考を与えた愛しい『こども』。
あとは残りの二人がこの子たちの『継続』と『終焉』を与えればこの子たちは、命の園へと住める。
「遅れてすいません…この子たちが、可愛らしいですね」
現れたのは女性的な顔立ちの男だ。優しい栗色の髪を高いところでまとめ、金の腰布をまとい木でできた装飾品で体を飾り、優しくそして嬉しそうに赤毛の男の腕でじゃれる赤ん坊に近づく。静かに頭を撫でるように二人の赤ん坊に手をかざす。
すると栗色の髪の男のから多くの美しい花が生まれたかと思うと赤ん坊たちを一なでした。
きょとんとした赤ん坊たち。その光景に二人は、笑う。
一陣の風と走ってくる人影。
次に現れたのは、少年だった。冷めるような青い短い髪と太陽のように燃え盛る瞳が焦りと心配で揺れている。
ばつが悪そうに少年が笑う。体中に汗が出ており大急ぎで来たのであろう。
日に焼けた肌に汗がきらりと光る。少年は黒い腰布をつけたのみでそれ以外の余分なものはない。
「わりぃ…その…!!それが新しい奴らか!!??」
赤ん坊を見るなり少年は、駆け寄る。嬉しそうに赤い瞳を煌めかせ笑う。
その光景にやれやれと二人があきれながら笑う。少年は赤ん坊の頬をつついたり、手を動かしたりする。
それを見て栗色の髪の男が少年をいさめる。少年はびくりとするがイザナミが少年の指を離さずに掴んでいた。きゃあきゃあとイザナギが笑う。
赤毛の男は、また優しく幸せそうに笑った。それを見て栗色の髪の男も笑う。少年もつられて笑う。赤ん坊たちはその光景が嬉しいのか手足を懸命に動かし、喜んでるように見えた。
「さぁ、この子たちに安らぎの運命を」
「りょうかい!!へへへ、ちゃあんと生きろよ!!!」
少年は赤ん坊たちの頭に手を置くと微量の黒い電気が走った。
そして、少年はわしわしと赤ん坊たちの頭を撫でる。
この日、人間は三帝神により『生誕』『生存』『死没』がほかの生き物たち同様に与えられた。
生命の紡ぎ手・ブラフマー、生命の担い手・ヴィシュヌ、生命の仕舞手・シヴァは新たな『こども』に祝福と試練を与え、見守った。
しかし、多くの人の紡いだ歴史により三帝神のヴィシュヌとシヴァは人の浅はかさに絶望。
ブラフマーも絶望し、嘆いたが人の中の優しさをいまだに信じている。

……続く……??
作品名:創世の物語 作家名:兎餅