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真朱@博士の角砂糖
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novelistID. 47038
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洗濯日和

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日曜日。
自分を呼ぶ娘の声で目を覚ますと、もう9時を回っていた。
「ママ、起きて、晴れだよ、公園ー!」
ベッドから体を起こしカーテンを開けるとまぶしい夏の日差しが流れ込んで来た。
「ほんとだ、いい天気。」
「ね、サリーと公園行こう。」
サリーは犬だ。娘が生まれる前からいる。
「そうだね。サリーに朝ごはんあげてくれる?」
はーい、と娘は寝室から駆け出した。
寝間着から涼しいワンピースに着替える。洗面所へ向かった。
洗った顔を拭きつつ気付く。
洗濯物が山のよう。
食パンをトースターにセットし、オレンジジュースを用意。
「ママ、サリーいっぱい食べたよ」
「そう、よかったね。手と顔洗って着替えておいで。服出しておいたから。」
「はーい。」
トースターからトーストが飛び出す。
バターを塗る。レタスを載せる。マヨネーズを塗る。ハムを載せる。完成。
こんなにも簡単な朝食を、娘は幸せそうに頬張る。
「はやく公園行きたぁい。」
「ママちょっと洗濯物してもいい?」
「ええー。」
娘は膨れた頬をさらに膨らませた。
「ちょっとだけ。」
「ちょっとだけならいいよ。」
娘はオレンジジュースを飲み干すとごちそうさま、と言いながら椅子から降りた。
「サリーと遊んでる。」
「うん。」
2つのコップを洗い、テーブルを拭いて、再び洗面所。
山のような洗濯物を飲み込んだ洗濯機が重い音をたてながら動き出す。
終わるまでの間に、掃除機もかけてしまおう。
掃除機のスイッチを入れるとすぐにパタパタと娘が走ってきた。
「お掃除もするのー?」
口をとがらせている。
「洗濯物が終わるまでだよ。」
娘は口をとがらせたまま再びパタパタとリビングから出て行った。
ちょっと怒らせた。
リビング、キッチン、廊下、トイレ、玄関、娘の部屋、といつもの順番で掃除機をかける。最後の寝室が終わって掃除機を切ったとき、タイミングよく洗濯機がピー、ピー、と音をたてた。
柔軟剤の香りにつつまれながら、洗濯物をカゴに詰め込み、それを持ってベランダに向かう。
おかしい。
リビングからベランダへ出る窓が開いている。
ふと気付く。
リビングの椅子がひとつ足りない。
窓の向こう、ベランダに、リビングの椅子と、その上に、娘。
「危ない!何してるの!」
洗濯カゴを取り落としベランダに飛び出る。
「あ、ママ、みてみて!」
抱き上げられながら、娘が嬉しそうに笑う。
「え?」
「きれいでしょ!」
物干し竿にかけられた洗濯バサミ。そのひとつひとつに、小さな青い花。
「お外、まだ晴れだったよ、早く公園行こう。」
大きく深く、ひとつ息をつく。
「…洗濯物干してからね。」
「ええー。」
娘は口をとがらせ、すぐに笑顔になる。
「お手伝いする!」
「ありがとう。」
娘にカゴから洗濯物を取ってもらい、それを干す。
花を挟んだままタオルや布巾を挟むのは意外と難しかった。
「おわり!」
「おわり!」
「行こっか」
「うん!」
サリー!行くよー!娘が駆け出す。
夏の風に揺れる洗濯物。
柔軟剤の香り、花の香り。
洗濯日和、日曜日。


作品名:洗濯日和 作家名:真朱@博士の角砂糖