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瀬戸内小話1

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口で



「歯、立てるなよ……?」
 すっかりその気になった元就の髪を梳くと、彼は鼻で笑う。いつもよりは温かな指先に包まれた己に息がかかってくすぐったい。
「……気をつけよう」
 保証はしないと、細められた目が語る。ああ、こいつはそういう奴だ。余裕があるとばかりに人をからかう。もっとも組み敷抱けば、こちらが耳元であれこれと囁いてやるのだから、お互い様か。
 内腿に、茶の髪が触れる。口から覗く赤い舌が、ちろりちろりと首をもたげた己の慾に触れては、逃げる。
「玩具じゃないんだぜ?」
「似たようなものであろう」 嘲うように応えられ、また息が触れた。
「……お願いしなきゃ、駄目か?」
 もう一度髪を梳き、最後、くっと引いてやる。それでは逆ではないかと視線で非難されるが、もうそれは互い慣れたもの。仕方ないと元就が口を開けた。


 一度くらいは己の手で、この男を喘がしてみたいと思う。いつも、勝手に人を上に下にと転がして、理性という縄を解くこの男を。
「……っく」
 髪を強く引かれ、痛みに眉を顰める。ただ、己の口内で、はちきれんばかりの男のものは、己が蠢かす舌によって、幾度も脈を打つ。
 口元がひどく汚れ、苦味が口に広がっている。それでも、咥え続ける己の姿は、きっとあさましい。
「毛、利……そろそろ、離せ」
 上ずった声が、暗がりで響く。もう少し、いま少しと、幹に舌を這わせ歯を立てる。体幹がその度にびくりびくりと振るえる様が、小気味よい。
 刹那、ぐいと引き離される。
 痛み上がる声は、喉へと溢れ出る精によって飲み込まれ、浮かぶ涙は、男の放ったものと交じり合う。
「……っくそ、だから離れろっていっただろ?」
 肩で息吐く男が困ったように笑う。
 返事も出来ずむせ返る己の背を撫で、無骨な指が頬を拭った。


 板間に着物を投げ捨てると、首筋に歯を立てる。白い肌は、すぐに花が咲いたように紅に染まるだろうが、闇が落ちた中では分からない。
 痛みに耐えるような声が、時折硬く閉ざされた唇から漏れる。
「我慢するなって、いつも言ってるだろ?」
「……黙れっ」
 宥めるように囁き胸を指で扱いてやるのに、上擦った声でこれだ。
 女のように嬌声を最初から上げるような可愛げが、この智将にあるはずもない。分かっていても零れさせたくて、捏ね返す。
「め、よ……」
「ん、なんだ? よく聞こえねぇ」
 あいた胸の先を噛んでやると、白い喉が鳴る。
「そうやって、声を上げろよ。そうすりゃもっと……」
 可愛げがあるのに。言いかけて、口を閉ざす。よく考えれば、この男の可愛げは、閨でもこうして虚を張るところであり、それをこの手で崩して行くのが楽しみでもある。
 黙った男を不信そうに見やる元就の口を啄ばみ、乱れた着物の裾を払う。
「もっと、……なんだよ?」
 内腿を舐め上げられひくりと背を震えさせても、いまだしっかりとした意思で元就が問う。応えの代わりにそこにも歯を立てると、強く髪を引かれた。
「貴様、蹴り出すぞ」
「怒るなって。……痛いのも嫌いじゃねぇだろ?」




作品名:瀬戸内小話1 作家名:架白ぐら