夢と少女と旅日記 第5話-1
L.E.1012年 5月11日
最近、商売をサボり気味なので、少しお金に困ってきました。いや、貯金はあるんですけど、じわじわと減っていくのは、さすがにちょっと焦りを覚えます。ということで、今日はこつこつと商売をしていました。もちろんニュースを見たり、お客さんと話したりして、エターナルドリーマーに関する情報を集めることも怠っていません。
そういえば、今日はエマーレ国のお客さんと話をしたので、エメラルドさんに「エマーレ語上手いですね」と言われましたが、実は私エマーレ国出身なんですよねえ。――と返したら、更に驚かれました。
このアラドミア国もトワランド語圏だから、トワランド語を話してるだけなんですけど、母国語と思われるくらい流暢に喋れているということなら、やっぱり嬉しいです。この日記を書くときはトワランド語の会話でもエマーレ語に訳してるんですけどね。
ちなみに、天界でもトワランド語が一番メジャーな言語のようですね。そもそもトワランド語は起源もはっきりしてませんし、もしかしたら天から与えられた言語っていう感じなのかもしれません。
L.E.1012年 5月12日
巷で話題のエターナルドリーマー事件ですが、最近ようやく流行り病などではなく、夢魔という悪魔の仕業であると知れ渡ってきたようです。エターナルドリーマーやドリームダイバーの証言のおかげです。
それと同時に各国でエターナルドリーマー対策本部というのが作られ始めているようで、あのアレクサンダー王も対策に乗り出したという噂です。しかし、世界一の大国であるヴァルバラッドの王であっても、ウェイクリングなしに他人の意識の中に入ることは難しく、あまり上手くいってないようです。
だったら、女神様に進言して志願している人全員にウェイクリングを与えさせればいいじゃないかと思われそうですが、ドリームダイバーが増えすぎるのも考え物かと思います。
現に夢魔を倒したあとに必要以上の報酬を要求する人もいるようで、私も自分のことを棚上げしつつ呆れ気味です。こんな状態でドリームダイバーが増えたら、自分の利益しか考えてない人ばかりだと思われそうです。
ですが、女神様もそこらへんは考えてるでしょうし、とりあえず私が口出しする必要はなさそうです。
L.E.1012年 5月13日
今日はお客さんから近隣に住む男性のエターナルドリーマーの情報を聞き出すことができたので、早速その方の元へと向かってみましたが、既に他のドリームダイバーの方が夢の世界へとダイブしていたようでした。
まあ、こんなこともありますよね。それでそのまま帰ってしまいましたが、ちゃんと夢魔は倒されたんでしょうか。話を聞きに、明日また行ってみましょうかね。
L.E.1012年 5月14日
……最悪な気分になりました。昨日の日記で書いたエターナルドリーマーの方の家に、また行ってきたのですが、夢魔は無事に倒されていました。それ自体はもちろん喜ばしいことです。
しかし、ドリームダイバーの方ががめつい野郎で、多額のお金を要求してきたそうです。エターナルドリーマーの母親が「そんな大金は簡単には払えない」と言うと、「だったら、家も家財も全部売り払えばいいだろ」と言ったそうです。
もちろんドリームダイバーの方も命がけですから、不当な要求とは言えないかもしれません。しかし、そんな言い草ってないと思いますし、人の弱みに付け込んで足元見てるみたいで気に入らないです。私がそいつよりも先にダイブしてればよかったのに。
作品名:夢と少女と旅日記 第5話-1 作家名:タチバナ