世界を支配する方法 其の壱
「世界を支配する方法」
【其の壱】
――俺は、フリーの記者をやっている。
普段は、政界のゴシップ記事を新聞社やマスコミに売り込んで生計を立てているが、今回、その「政界ゴシップネタ」を追っていた矢先、「ひょんなこと」から「政界」をすっ飛ばして「世界の権力構造を創りだした組織のネタ」を偶然にも(不幸にも?)、掴んでしまった。
すると、俺がそのネタを「掴んだ」という情報がどっかからか漏れたようで、俺はその組織のトップと「取引」をするという事態になった。
最初は断るつもりだった。
理由は「殺される」と思ったからだ。
だが、しかし、すぐにまた考えなおした。
もし、そいつらが「本気で俺を殺す」つもりなら、こんな「取引」をかけるなんてまどろっこしいことはせず、すでに「実行部隊」が送り込まれて殺されているだろう。
しかし、向こうからあえて「取引」を持ちかけたのはどういうことだろう?
まあ、おそらくは、「まだ、俺を殺せない『理由』がある」……そういうことなのだろう。
俺はこのネタを掴んだ瞬間から「職業上」、自分の身の危険を感じていた。
実際、ネタを掴んだ後、半日も経たない内に向こうから「取引」の接触があったからだ。
つまり、行動は「把握」されているということだ。
それでも、まだ殺されないということは「殺されない理由」があるということである可能性が高い。
そうなると、今度は俺の「職業上の好奇心」が沸々と沸いてきた。
「俺が殺されない理由……生かされている理由は何だ?」
俺は、このネタを掴んだときから、半分、死の恐怖を意識してたが、このおかげで、今は「死の恐怖」よりも「生かされている理由という好奇心」が上回っていた。
それでも一応、死ぬのはゴメンなので、その辺はいろいろと「対策」は打った。
それは、自分の信頼の置ける仲間にその「ネタ」のコピーを渡し、そして、もし自分が「行方不明」や「失踪」「死亡」になったときには、その「ネタ」をテレビ、新聞、雑誌、インターネットに情報を流させるよう「保険」をかけた……まあよくある「対策」さ。
そんな……準備を万端にし、俺はその「取引相手」の指定する場所へと向かった。
――指定場所、そこは品川にある「とある高級ホテル」のVIPルームだった。
俺がそのVIPルームのある最上階へエレベータで向かう。
そして、エレベータの扉を開くと、もうそこは部屋の中だった。
男:「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
俺は、男に案内され、部屋の奥へと足を運ぶ……そこには「老人」が座っていた。
所見からすでに「オーラ」がすごく、その時点ですでに「圧倒」されていた……が、そんな動揺を悟られないように一応は努力した……が、まあ見透かされている気はするけどな。
老人:「はじめまして。〇〇さん。私の名は……とりあえず伏せておきましょう。わたしが必要と感じたら、そのときはまた改めて紹介させてもらうよ」
俺:「は、はあ……。と、とりあえず、今回の単独インタビューの件、本当にありがとうございます」
――この「取引」は、よく記事を買ってもらっている(ヒイキにしてもらっている)Y新聞のトップ自らから俺に連絡があり、この老人の「単独インタビュー」の話をもらった。
何でも話しでは、この老人からY新聞に俺への指名があったとのことで、丁重にもてなすよう言われたようで、それでY新聞のトップである「W氏」自らが俺のとこへ連絡をした……とのことだった。
もちろん、こっちとしてもこの「単独インタビュー」というものが、俺の掴んだネタに対しての「取引」であるということは察していた。
なんせ、このネタが流出すれば「その組織が潰れる」とかそういった「小さな事」どころではなく、「世界を揺るがす」ことになるほどのネタだからだ。
老人:「はっはっは……もういいだろ、茶番は。どうせこの部屋にはわたしと君とこの横の男しかいないのだ。本音でいこう。つまり……『取引』の話だ」
俺:「……そうです、ね」
俺も、別に「単独インタビュー」が目的ではなかったので、その申し出は妥当だろうと特に気にもならなかったし、むしろ「取引」の話をすぐにしたかったのでその申し出は、こっちから「取引の話をしましょう」と言う難しさを解消してくれたので、むしろありがたかった。
こうして俺と老人の「取引」が始まった。
作品名:世界を支配する方法 其の壱 作家名:mitsuzo