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夢と少女と旅日記 第4話-2

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 天界へとテレポートするには、30分ほどかけて座標を指定する必要がありました。まあ、これは町の至るところにある普通のテレポート装置と同じですね。全然違う場所に行っちゃうだけならいいですが、下手すりゃ壁の中に埋まって窒息死なんてこともあり得るんで、あんまり急ぐと危険なわけです。
 ――まあ、既に物体が存在する地点への移動なんて、意図的でもなきゃまず起こり得ないですけどね。移動者が持つ魔力とその物体が持つ魔力が反発し合って、移動を拒みますから。
 余談ついでに、テレポート準備中にエメラルドさんから聞いたことも書き残しておきましょうか。まず天界には、妖精、天使、精霊というみっつの種族がいるそうです。
 基本的に、妖精は人間の手の平ほどの大きさな非力な存在です。天使は人間と同じ大きさで、強力な魔法を使える者も多いようです。どちらもほとんどの場合、人間の女性に羽が生えたような姿をしているそうです。もちろん男性もいるらしいですが、数は少ないようです。
 精霊については、一言で言い表すのは難しいようです。人間の姿をしている者もいれば、どう見ても化け物にしか見えない者もいるそうで、妖精や天使よりも強力で強大な存在を精霊と呼ぶのが正確なようです。
 しかし、強力な天使という意味で大天使という言葉を使うこともあるそうで、やはり一筋縄では説明が難しいようです。本人がどう思っているのかの方が重要なのかもしれません。
 神様は、この三種族の中から選ばれるそうですが、先述の通り妖精は非力な存在なので、大抵は天使か精霊の中から神様が選ばれるそうです。そして、現在の神様であるダイアモンド様は元・精霊、――と言っても人間型だそうです。ああ、もうややこしい。
 まあ、そんなことはどうでもいいです。とりあえず人間の姿さえしてくれるならコミュニケーションも取りやすいだろうなと思いました。
 ともかく私たちは天界へとテレポートしました。辿り着いた先は城門の前で、おそらく天使だと思われる女性二人が警備をしていました。彼女たちはどうやらエメラルドさんの顔を知っていたようで、すんなりと通してくれました。
「そもそも外敵の心配なんて、ほとんどないんですけどね」とエメラルドさん。
「確かに天空にあるお城なんて容易には辿り着けませんよね。おそらく女神様が認めた人以外はテレポートできないようにする結界も張ってるでしょうし、このウェイクリングがなかったら、私にはどうしようもなかったと思います」
「それはそうと、女神様を怒らせないように気をつけてくださいね。大らかな方ですから普通にお会いにはなってくれると思いますが、怒ると怖いですから」
「そういや、女神様って女神様なんですよね。そんな偉い人と会うんだと思ったら、ちょっと緊張してきました」
 そんな会話をしながら、私たちは城内を進んでいきました。そして、大きな門の前で、エメラルドさんはふわりと停止しました。やはりそこにも警備中の天使と思われる人がいました。つんけんしてそうな人でした。
「あら、エメラルドじゃない。相変わらずドン臭そうな顔してるわね。女神様に何か用?」
「……例の事件のことで報告が」
 エメラルドさんの返答はどことなく素っ気ないような気がしました。
「何? ドン臭そうって言われただけで怒ってるの? はいはい、悪かったわよ。私、これでもあなたに対して好意的なつもりなんだけど」
「まあ、私もあなたに対して喧嘩売りたいわけじゃないですけど……」
「糞真面目過ぎて冗談通じないからいじめられるんでしょ、あんた。まあ、私も人のこと言えないけど、なんかイライラするのよね」
 そうは言っても、エメラルドさんのことを心配しているように聞こえました。多分この人はそんなに悪い人ではないでしょう。それにしても、エメラルドさんって天界でいじめられてたんでしょうか。
「……で? そのうしろにいるのは人間?」
「あ、はい。きっかけは偶然みたいなものですけど、成り行きで夢魔と戦うことになりまして」と私は応えました。
「エターナルドリーマー事件ですね。ちょうど下界調査隊が、そのことで話があるとかで女神様と話してるところです。ほら、耳を澄ますと話し声が聞こえてくるでしょ? まあ、聞かなくてもなんの話かは察しがつくんですけどね」
 そう言われてみて、私は耳を澄ましました。すると、確かに女性たちの話し声が聞こえてきました。どうやら女神様を含めて、女性が3人いるようでした。
「――ということで、南方地域で先日起きた大地震の危険度はBランク、一刻も早く復興できるように支援すべきだと思います」
「また、ウィルドニア国で多発している紛争の危険度はAランク、最悪の場合、国が崩壊してしまうかもしれません」
「なるほど、分かりました。対策はまた今度考えましょう。報告は以上ですか? では、もう下がってよろしいですよ」
「いえ、女神様。お言葉ですが、また今度などと悠長なことを言ってる暇はないと思われます。どうやら最近、危険度Eランクのエターナルドリーマー事件とやらに尽力されておられるようですが、そんなものは放置しておけばよいのです」
「もちろんまるっきり無駄だとは申し上げませんが、物事には優先度というものがあるのです。正直に申し上げまして、女神様は目先のことばかりに捉われておられるようです。どうかお考え直しを」
 女神様の配下と思われる二人は、女神様に対する態度だとは思えないほど横柄でした。何故ここまで強気になれるのか、このときの私には理解できませんでした。そして、穏やかに話を聞いている様子だった女神様がついにキレ出しました。
「だぁってろ、この糞ボケどもが! 私だって、危険度Aランク、Bランクを無視してるわけじゃねえ! だが、そっちは長期的に計画練らなきゃどうにもならねえだろうが!
 エターナルドリーマー事件は今は確かにEランクかもしれないが、放っておけばDランク、Cランクと上がっていってもおかしくねえんだよ! だから、今すぐ芽を潰してしまった方がいい。そんなことも分からねえってのか!」
 ……しかも、なんだかキレ方が男らし過ぎます。確かにエメラルドさんの言う大らかという表現で間違ってなさそうですが、ここまで豪胆な人だとは予想外でした。