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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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第3章 降臨~Dražen~



ガブリエルは公爵夫人イングリッドがラーゲルレーヴの会長に就任して以来の忠実な秘書だ。どんな局面でも感情を露わにする事がないその冷静さは上司である公爵夫人以上だと囁かれている。しかしその冷静沈着な筈の彼女は今別邸の廊下を歩き回り焦燥感に苛まれていた。特殊部隊到着までには時間がかかる上、夫人の行方の手がかりさえ掴めない。誘拐の現場にいた警部は重傷を負い近くの病院の集中治療室にいる。 拉致された公爵夫人を追跡している警備会社の男、ドラジェンからは未だに何の連絡も入って来ない。
 それに...とガブリエルは更に焦燥感をつのらせつつ考える。支店長は何処にいるのだろう?最近彼と公爵夫人の間で何か重要な話題が交わされた事は間違いない。今日の午後から長期休暇を取る事になっていた筈だが、この緊急時に連絡すらよこさないなんて。

 突然、ガブリエルの端末が音をたてた。公爵家の本邸からだった。内容を聞き彼女は仰天した。指名手配されている筈の男、榛統也から連絡を受けたと言うのだ。しかも統也は誘拐犯達の正確な位置を伝えるとそのまま連絡を絶ったという。次いでガブリエルは支店から連絡を受けた。社員が数時間前東洋系の大柄な男に襲撃され、男は社員のバイクを奪うと何処へか走り去ったという報告に彼女は呆気に取られた。