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夢と少女と旅日記 第4話-1

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 L.E.1012年 5月8日

 あれから数日が経ちました。これだけ長い間、日記を書かなかったのは久しぶりです。別に特別忙しかったわけでも、落ち込んでたわけでもないですが、エメラルドさんと出会った直後から考えれば平穏で特に書くこともない日々でした。
 普通に隣町から隣町へと旅をして、普通に路上で商売をして、あとは食べたり眠ったりと、私にとっては普段通りの生活をしていました。
 エメラルドさんも何やらずっと考え事をしている様子で、エターナルドリーマーの事件を解決しろと口うるさく言うこともなくなりました。
 それで、今日の朝、宿屋でいいかげん話しかけてやろうかと思ったのですが、普通に話しかけてもつまらないので、スカートをばさりとめくってやりました。
「ひゃあっ!? ネ、ネルさん、いきなり何するんですか!」
「あんた、パンツの色まで緑なんですか。一体どういうセンスしてるんですか」
「うるさいですよ! 余計なお世話です!」
 エメラルドさんは、ぷんすこ怒ってましたが、さっきまでの暗い顔はどこかに飛んでったようでよかったです。そんなミニスカートで飛び回っておいて、怒られても困るんですが。
「ところで、ちょっと真面目な話がしたいんですが、その前になんであんたがうだうだ悩んでるのか説明してもらえますか?」
「そりゃもちろん夢魔のことですよ。私は最初、夢魔たちは絶対に悪い奴らだと思ってました。そして、私が正義として、それを裁かなきゃいけないと思ってました。
 でも、話を聞いてみると彼らは彼らなりに考えて、己の正義を貫こうとしてるんだと分かりました。だから、夢魔たちを倒すことが本当に正しいことなのか、私には分からなくなってしまったんです。もしかしたら、ちゃんと話し合えば分かり合えるかもしれませんし……」
「なんだ、そんなくだらないことですか。いいですか、エメラルドさん。世の中には正義も悪もないんですよ。そんな単純な二元論はフィクションの中にしか存在しません。
 彼らには彼らなりの信念があるというのは当然のことです。しかし、それを踏まえた上で、私は彼らは間違っていると断じます。それは私の正義と彼らの正義が相反するからです。私は彼らが悪だとは思いませんが、許しちゃいけないとは思いますよ」
「ええっと、つまり私はどうすれば……?」
「あなたはあなたの正義を信じればいい。ただそれだけの話ですよ」
「私の正義……、私の正義は女神様に尽くすこと……。それは何があっても変わらない……」
 エメラルドさんはうわ言のように呟きました。それがあなたの正義なら、ただそれを信じて貫き通せばいいと思いますよ。
「で、本題はその女神様のことです。私がナイトメアを倒すなんて言ってしまいましたが、女神様の協力なくしては成し遂げられないと思います。何故なら私の力だけでは、そもそもナイトメアと直接対峙することすら叶わないからです」
「ナイトメアはおそらく夢の世界を自由に行き来できますしね……。もし仮に遭遇することがあったとしても、すぐに逃げられてしまうかも」
「つまり、何かしらの方法でナイトメアを足止めしなきゃならないということですね。ですが、いくら考えても、私がそんな方法思いつくわけもないので女神様に頼る必要があるわけです」
「そういえば、私とあなたが出会ってから、もう一週間になりますよね。そろそろ女神様に近況報告しに行かないと……。ネルさんも一緒に来ますか? 多分女神様はお会いになってくれるかと思いますよ」
「はい。この数日間、そのことを考えていました。是非お願い致します」
 こうして、私は女神様のいる天界へ行くことになりました。ウェイクリングの力を使えば、妖精のような羽がなくても、天界へテレポートできるようです。なんともご都合主義的な感じですが、女神様と会えるならば文句はありません。