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一条 陽香流
一条 陽香流
novelistID. 46467
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Thin Ice

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 「気が付いたか?」

 見知らぬ男の声で眼が覚める。全身が鉛のように重く、右足が疼く。

 「ここは?」やはり見知らぬ部屋どうやらベッドに寝かされているみたい。

 「俺の部屋、起き上がれるか?今水を持って来てやる。」

 夕べは珍しく飲み過ぎて、途中から記憶が無い。

 「夕べの記憶が無いんだろ?お前チンピラに絡まれて路地に転がってた。」

 「アンタは?」

 「ただの通りすがりだ。」

 男はその辺りのモデルよりも整ったスタイルと顔で少しハスキーな色っぽい声

 そして何もかも包み込みそうな深い茶色の瞳。

 「何で?助けた。義理ねえだろ?」少しイラついて問いかける。

 すると急に男が顔を近づけて来た。

 「おお、夕べは暗くて良く見えなかったけど、お前綺麗な顔してるな。」

 「何だよ。急に」

 綺麗だと言われる事にも慣れているし、男に言い寄られる事も初めてではない。

 だけど、顔を近付けられただけで体が硬直したのは初めてだ。

 「義理か、そうだ。お前、家でバイトしない?」

 「はあ?話がわからない。」

 「俺、進藤省吾。ホストクラブのオーナーやってるだけど今ホストが足りないんだ。

  バイトで良いから来いよ。」整った男前の顔をクシャっと崩して笑う。

 「俺が?ホスト?」

 「お前モテルんだろ?夕べも女絡みだったみたいだし。きっと稼げるぞ。」

 ホストなんて考えもしなかったけど、子どもみたいに嬉しそうに笑う省吾に

 何故だか興味を持った。

 黙って座っていたら、他人を寄せ付けない位に整った容姿をしながら、Tシャツに

 スエットを履いただけで髪も洗いざらしの無防備な格好で、初対面の俺に笑いかける。

 

 『面白い奴』これが省吾に対する第一印象だった。








作品名:Thin Ice 作家名:一条 陽香流