劇場の主と客人
演劇鑑賞後の挨拶をしに楽屋へ訪れる、大人のかけひき的なワンシーン。
ミイラ男(M)…彼が包帯グルグル巻きなのは役になりきるため。
演技に集中し、自分に自分を見せないためでもある。
アルラウネ(A)…美しい女人型植物モンスター
A お疲れ様、今日も素敵な舞台だったわ。
M これはこれは…まさか、本日もお越し頂けるとは…
毎回招待状を送りつけてる甲斐がありますよ。
A おかげ様で退屈しないわ。
…人間達との生活は楽しい?
M ええ…演劇こそ、私の生きがいですから…。
A …魔界を捨てる程ですものね。
貴方の情熱は本物だわ。
M お褒め頂き光栄です。
(短い沈黙)
A ねぇ?貴方の素顔をご存知の方はいらっしゃるの?
M 貴女がお望みならいつでも御覧にいれましょう。
A お口がお上手ですこと…
それは私の欲しい答えではないし、そんな気はないのでしょう?
M 信じる信じないはお任せしますよ。
ただ…私は、貴女相手に芝居はできません。
A …まぁ、いいわ。
次の舞台も呼んでくださることを願っています。
楽しみにしてるわ、御機嫌よう。
M この甘美なひとときを永遠に繰り返すのも悪くない…
だが、よからぬ虫が付かぬよう、そろそろ摘み取ってしまおう。
あなたは私の元でこそ輝く、ただ一輪の華なのだから…