笑うエステティシャン
あまり観光化が進んでいない高原の無人駅に一人の女が降り立った。
女の名は江坂ミミ、25才の平凡なOLである。
体験エステでなぜか貰った高原の宿泊付きエステコース招待券。
殺到すると困ると言うので、指示どおり友達にも告げずに来た。
ミミは見たところ泊りがけでエステに来る必要などないだろう、と思わせる程の美人であった。
しかし、女性の美へのこだわりは、時に恐ろしいまでの執念を見せるものなのである。
駅で居合わせた数人と迎えに来たバスに乗り込んでしばらく揺られると、シックな高原のホテルといった趣の建物の前に停まった。
大勢のスタッフ? が出迎える。
「いらっしゃいませワタクシ店長の江利です。あら、珍しく小柄な方がお見えなのね、残念」
「でも、スポーツでもやってらしたのかしら?しなやかな筋肉でエステなんかなさらなくても良いくらい……」
美人の店長であったがなかなかのやり手なのかも知れない。
次の客の来店に一瞬、片目だけがぐるりと動いた気がした。
ミミはギョッとしたが、二度とは見る事が出来ず、気のせいだと思う事にした。
「按乃(あんの)さん、こちらについて下さる?」
大勢並んだスタッフの一人を手で招き、ミミの前に立たせた。
「こんにちは担当の按乃季織(りおり)です。どうぞこちらへ」
按乃というスタッフは丁寧にお辞儀をしてから、ミミを別室の方へ案内するかたわら本日のコースを簡単に説明した。
・全身脱毛
・風呂
・あら塩マッサージ
・サウナ
・フルーツパック。
・ハーブ・スパイスマッサージ
・薫蒸(ヨモギの煙で燻すやつ)
・強力電気パルス
・仕上げ
とまあこんな具合らしい。
ミミは「あらら、これじゃあ確かに泊り掛けじゃないと無理だわねぇ」などと考えながら按乃の後をついて行った。
その日の夜……。
「美味しかったですね?店長。」
「ええそうね、いつもは脂肪が付き過ぎの人間ばかり来るから」
「しかし店長、地球人は仲間同士でもあんな事を平然と行えるんだから、本当に野蛮な種族ですよね?」
「そうよ按乃さん、でもそのおかげで私達も良心が咎める事無くご馳走になれるんだから文句は言えないわね。ふふふ」
おわり
女の名は江坂ミミ、25才の平凡なOLである。
体験エステでなぜか貰った高原の宿泊付きエステコース招待券。
殺到すると困ると言うので、指示どおり友達にも告げずに来た。
ミミは見たところ泊りがけでエステに来る必要などないだろう、と思わせる程の美人であった。
しかし、女性の美へのこだわりは、時に恐ろしいまでの執念を見せるものなのである。
駅で居合わせた数人と迎えに来たバスに乗り込んでしばらく揺られると、シックな高原のホテルといった趣の建物の前に停まった。
大勢のスタッフ? が出迎える。
「いらっしゃいませワタクシ店長の江利です。あら、珍しく小柄な方がお見えなのね、残念」
「でも、スポーツでもやってらしたのかしら?しなやかな筋肉でエステなんかなさらなくても良いくらい……」
美人の店長であったがなかなかのやり手なのかも知れない。
次の客の来店に一瞬、片目だけがぐるりと動いた気がした。
ミミはギョッとしたが、二度とは見る事が出来ず、気のせいだと思う事にした。
「按乃(あんの)さん、こちらについて下さる?」
大勢並んだスタッフの一人を手で招き、ミミの前に立たせた。
「こんにちは担当の按乃季織(りおり)です。どうぞこちらへ」
按乃というスタッフは丁寧にお辞儀をしてから、ミミを別室の方へ案内するかたわら本日のコースを簡単に説明した。
・全身脱毛
・風呂
・あら塩マッサージ
・サウナ
・フルーツパック。
・ハーブ・スパイスマッサージ
・薫蒸(ヨモギの煙で燻すやつ)
・強力電気パルス
・仕上げ
とまあこんな具合らしい。
ミミは「あらら、これじゃあ確かに泊り掛けじゃないと無理だわねぇ」などと考えながら按乃の後をついて行った。
その日の夜……。
「美味しかったですね?店長。」
「ええそうね、いつもは脂肪が付き過ぎの人間ばかり来るから」
「しかし店長、地球人は仲間同士でもあんな事を平然と行えるんだから、本当に野蛮な種族ですよね?」
「そうよ按乃さん、でもそのおかげで私達も良心が咎める事無くご馳走になれるんだから文句は言えないわね。ふふふ」
おわり
作品名:笑うエステティシャン 作家名:郷田三郎(G3)