Beautiful World
メグちゃんの視線が空へと向けられる。空はまだ鮮やかな青色だろうか。判らない。メグちゃんの胸に腫れた頬を押し付けて、ゆっくりと呼吸を繰り返す。メグちゃんの鼓動の音すら、可愛くって可愛くって、いつになったら僕を好きだと認めて、受け容れてくれるんだろうと思案する。そうして、それまで僕は何回メグちゃんに殴られるんだろう。殴られることにすら満足感を覚え始ている自分が気色悪くて、そうして誇りに思えた。
「こんなにも愛してる」
心臓の上に唇を緩く押し付けて、淡く囁く。そうして、メグちゃんも僕のことをこんなにも愛している。それが解っているから、僕は殴られようが蹴られようが、もっと酷い目に合おうが、決してこの世界に絶望なんかしない。僕が全てを失っても、メグちゃんだけは傍にいるという酷い自負心。
風が雑草の間を通り抜けて、頬を撫でる。きっと空はきれいな青色だ。空気には光が満ちてる。呆れるぐらい美しいこの世界。僕とメグちゃんの世界。
作品名:Beautiful World 作家名:耳子