魔女と魔女狩り Ⅳ
―9章―
私は彼らのうちの2人に腕を掴まれた
私がレイラだ、ということは言っていないのに
彼らが知っているということは
政府には私が魔女だということがバレているだろう
どこから情報が漏れてしまったのか、
なんてことこの時代考えても無意味だ
「「おい、レイラ…!?」」
ふたりが声を合わせていう
目には戸惑いが、声には震えが篭っていた
私はふたりに最後の笑顔を向けた
「…じゃあね!マスター。ヴィクター」
私はそういうまでいきなり入ってきた政府の連中に引きずられて
言ってからは自分の足で前へ、進んだ
でも、誰にも聞こえないくらいの小さな声で私は彼にお別れを告げる
「……さようなら、楽しいユメをありがとう。
さようなら…ヴィクター……」
私たちが酒場から出ようとした瞬間ヴィクターが叫んで彼らを止めた
「おい!お前ら、いきなりなんなんだよ?
……レイラをどこへ連れて行く!?」
彼らは身体を半分ヴィクターの方に向けて
淡々と静かな声で、こう告げた
「こいつに処刑命令が出たからだよ」
なにも知らないヴィクターとマスターは
訳が分からないといった顔をして私をみた
「…なんだ。なにも知らないのか?」
5人のうちのひとりがからかうように言って
ほかのもう一人がこう続けた
私の言えない、私の秘密を
「それはねぇ~、彼女が魔女だから!」
さっきの大人びた冷めた雰囲気の男とはうってかわり
妙に子供っぽい声で答えた
ふたりは私を見続けた
でもさっきとはほんのすこし違う
…その目には、ほんの少しの、恐怖が混ざっていた
そんな目で見ないで。
大切な私の仲間。
目を、逸らさないで……
「レイラ…?」
今度はマスターが口を開いた
ヴィクターは嘘、だろ…?
とぶつぶつつぶやいている
「…はははっ!ふたりには…
バレたくなかったんだけどなぁ~!」
わざと明るい声で私は言った
そういうと同時に彼らは私から目を逸した
…目をそらさないでよ。
私を拒絶しないでよ
私が魔女でも、
あんたらと過ごしたことは、時間は、変わらないんだよ?
ふたりは私から目を逸した
あぁ、そっか…
私…この二人に、捨てられたんだ……
私が魔女と政府にバレたことより
二人に私の秘密を言われたことより
大切な仲間が、私を拒絶したことのほうがずっと、ずっと
…苦しいよ…、寂しいよ…